高エネルギー加速器研究機構(KEK)
量子場計測システム国際拠点(WPI-QUP, KEK)
京都大学
本研究成果のストーリー
Question
宇宙の物質の大部分を占めると考えられている暗黒物質(ダークマター)の正体は、現代科学における最大の謎の一つです。近年、ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)中心を利用したダイヤモンド量子センサーは、アクシオンなどの超軽量暗黒物質が生み出す極めて微弱な信号を検出する有力な手法として注目されています。しかし、これまでの手法ではダイヤモンドNV中心が持つ潜在的な利点は十分に活用されていませんでした。
Findings
ダイヤモンドNV中心が持つ量子力学的性質を利用すると、現実的なノイズ環境下においても従来の方法を上回る測定精度が得られることを示しました。さらに、暗黒物質由来の信号に対する応答を増強すると同時に、環境由来の共通ノイズを抑制できる手法を採用しました。この手法をアクシオン暗黒物質探索に適用すれば、アクシオンの観測感度が、既存の方法と比較して最大で約10倍向上する可能性を示しました。
Meaning
本研究は、多準位量子計測の一般原理を暗黒物質探索という具体的な課題へ応用できることを示しました。さらにこの手法は暗黒物質探索に限らず幅広い応用可能性を持っています。本成果は高次元量子センサーを用いて極めて微弱な基礎物理信号を探索する新たな研究方法を切り拓きます。
概要
いまだ正体が明らかになっていない暗黒物質(ダークマター)の観測のために、量子センサーが注目されています。特に、ダイヤモンド中の窒素空孔(NV)中心を利用したダイヤモンド量子センサーは、暗黒物質候補であるアクシオンなどの軽い粒子が生み出す微弱な信号を検出する手法として有望ですが、これまでの検出手法ではNV中心の量子力学的な特徴は十分に活用されていませんでした。
本研究では、ダイヤモンドNV中心のスピン三重項状態の三つの量子準位を「量子三準位系(qutrit)」として活用することで、従来法を上回る測定精度が得られることが明らかになりました。この手法をアクシオン暗黒物質探索に適用すれば、測定精度を高めることができ、アクシオンと電子の相互作用に対する感度が最大で約10倍向上する可能性を示しました。
これにより、高次元量子センサーを用いた極めて微弱な基礎物理信号の探索に、新たな道が切り拓かれます。
本研究は2026年6月にPhysical Review A誌のLetterとして発表されました。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。
お問い合わせ先
高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
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