ルビジウムを含む初めての高酸化物イオン伝導体Rb5BiMo4O16を発見

Rbの新しい用途と市場、低温動作・低コストな
固体酸化物形燃料電池の開発に期待

東京科学大学
高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター

ポイント

  • ルビジウム(Rb)を含み、酸化物イオン(O2−)伝導度が高い安定な材料としては初めてとなるモリブデン酸ルビジウムビスマスRb5BiMo4O16を発見。
  • 結晶構造の解析と第一原理分子動力学シミュレーションにより酸化物イオン伝導度が高い理由を解明。
  • Rbの新しい用途と市場、固体酸化物形燃料電池の動作温度の低温化とコスト削減につながると期待。

概要

東京科学大学(Science Tokyo)理学院 化学系の八島正知教授、安井雄太大学院生(研究当時博士課程3年次)、城島一暁大学院生(研究当時修士課程2年次)、藤井孝太郎助教と高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所/J-PARCセンターの森一広教授の研究グループは、高い酸化物イオン伝導度と高い安定性を示す材料群Rb5BiMo4O16とRb5RMo4O16Rは希土類)を発見しました(図1)。

 酸化物イオン伝導体は固体酸化物形燃料電池(SOFCs)などへの応用が期待されています。しかし、現在用いられている材料は動作温度が高く、製造コストや安定性の問題があるため、中低温(300~600℃)で高い伝導度と安定性を示す酸化物イオン伝導体が求められていました。また、Rb元素の新しい用途と市場が求められていますが、Rbを含む酸化物イオン伝導体の報告は殆どありませんでした。 本研究では、475組成のRb含有酸化物のコンピュータスクリーニング、試料合成、および結晶構造と輸送特性の評価を組み合わせた手法によって、パルミエライト型Rb5BiMo4O16を発見し、高い酸化物イオン伝導度を持つことを明らかにしました。Rb5BiMo4O16はイットリア安定化ジルコニア(YSZ)の29倍に及ぶ高い酸化物イオン伝導度(300℃で0.14m S cm−1)を示しました。480℃以下での高いイオン伝導度は、結晶構造における大きな間隙によりイオン伝導の活性化エネルギーが低いことや、酸素原子の極めて大きな異方性熱振動とMoO4四面体の回転運動、酸素原子を挟んでいる陽イオン間距離が長いことが高い伝導性の原因と考えられます。また、Rb5RMo4O16材料も顕著な導電性を示すことを明らかにしました。

本研究成果は、2025年2月3日(現地時間)に国際学術誌「Chemistry of Materials」電子版に掲載されました。


図1. サイズが大きなRbを含む酸化物495個の結晶学データについて、コンピュータスクリーニングを行い、選定したパルミエライト型酸化物Rb5BiMo4O16試料を合成した。Rb5BiMo4O16は既存の材料YSZより高い酸化物イオン伝導度を示した。その原因は、MoO4の回転、酸素の大きな異方熱振動、MoO4の配列と酸化物イオンの拡散経路の形成、酸素原子を挟む陽イオン間距離が長いことにある。©著者ら(2025)

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。

お問い合わせ先

高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
Tel : 029-879-6047
e-mail : press@kek.jp