40年ぶりに中性子過剰なウラン同位体を新発見 〜ウランの起源解明に期待〜

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
国立研究開発法人理化学研究所

概 要

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所和光原子核科学センターの庭瀬暁隆博士研究員と国立研究開発法人理化学研究所(理研、埼玉県和光市)仁科加速器科学研究センターの向井もも基礎科学特別研究員を中心とする国際共同研究グループは、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」のKEK元素選択型質量分離装置(KISS)と多重反射型飛行時間測定式質量分光器(MRTOF-MS)を用いて、ウランの中性子過剰な同位体241U(ウラン)の合成と同定に初めて成功しました。ウランの中性子過剰な同位体の発見は1979年以降実に40年ぶりであり、これは多核子移行反応による原子核合成に特化したKISSと高精度の質量測定を可能にするMRTOF-MSという2つの最先端の実験装置を組み合わせることで初めて可能になった研究成果です。

中性子過剰なアクチノイドは天然に存在するウランやトリウムを合成した星の中での元素合成過程の一つであるr 過程を解明する上でその性質の情報が重要であるにも関わらず、合成が困難であったためにこれまで実験的な研究が進んできませんでした。本研究の成果は従来合成が困難であった中性子過剰なアクチノイドの領域へアクセスする実験手法を確立し、この手法を発展させることでr 過程の解明に向けて当該領域の原子核に対する実験研究の進展が期待できます。

本研究の成果は、物理学の国際的な専門誌である「Physical Review Letters」に3月31日(米国東部時間)に掲載されました。また本論文は、「Physical Review Letters」において、特に注目すべき論文(PRLエディターズ・サジェスチョン)として紹介されました。

本研究成果のポイント

  • 天然に存在するウランやトリウムは星での元素合成過程の一つであるr過程によって作られたと考えられていますが、その詳細は分かっておりません。
  • ウランやトリウムの起源を解明するためには中性子過剰なアクチノイドの性質を調べる必要がありますが、それらの原子核を実験で合成することは困難でした。
  • 多核子移行反応によって中性子過剰なアクチノイドを合成する手法を確立し、40年ぶりに中性子過剰なウランの同位体を新たに発見しました。
  • 本研究手法を発展させることで、ウランの起源解明に向けてこれまで合成することができなかった中性子過剰なアクチノイドに対する実験研究が進展することが期待できます。

お問い合わせ先

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