硬くて丈夫なゲル電解質

―フレキシブル電池の耐久性向上に期待―

東京大学
日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター
高エネルギー加速器研究機構
科学技術振興機構(JST)

本研究成果のポイント

  • 世界最高水準の強靭(じん)性と弾性率を示す、硬いのに丈夫でフレキシブルなゲル電解質を開発しました。
  • 従来のゲル電解質では硬さと強靭性にはトレードオフの関係がありましたが、本研究では、(i)ナノ相分離による高弾性率化、(ii)伸長下での高分子結晶化による強靭化によって、硬さと強靭性の両立に成功しました。
  • 本材料は充電池の短絡を防ぐために十分な硬さを有し、繰り返し変形に耐えられる強靭性も併せ持っていることから、フレキシブル電池の耐久性向上につながります。耐久性、柔軟性に優れた電池が実現すれば、肌や服に貼り付け可能なフレキシブルデバイスへの応用が期待されます。

概要

東京大学物性研究所の橋本慧特任助教(研究当時)と眞弓皓一准教授、同大学大学院新領域創成科学研究科の伊藤耕三教授らは、「硬くて丈夫な電池用ゲル電解質」を開発しました。フレキシブル電池に適用可能なゲル電解質には、イオン伝導性に加えて、短絡の原因となる充放電時に生じる金属結晶の成長を防ぐための硬さが必要です。また、繰り返しの曲げ変形に耐えられる強靭性も兼ね備える必要があります。従来材料では、硬さと靭性にはトレードオフの関係があり、この両立は難しいと考えられてきました。

本材料では、材料内部にミクロ相分離構造を形成させることで、金属結晶の成長を防ぐのに十分な硬さを実現しました。さらに、曲げ伸ばしで大きな負荷がかかると、高分子鎖が結晶化して硬くなることで、固体・半固体・有機無機複合ゲル電解質の中でも世界最高水準の高い強靭性を達成しました。硬さと強靭性を併せ持つゲル電解質を電解質膜として用いることで、フレキシブル電池の耐久性向上につながることが期待されます。

この共同研究に参加した日本原子力研究開発機構/KEK 物質構造科学研究所の青木裕之特別教授は、ゲル電解質の構造解析実験の一部を担当しました。

本成果は、米国の科学雑誌「Science Advances」オンライン版2023年11月24日(現地時間)に掲載されました。

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