肝がん再発予防薬の標的タンパク質を同定

-タンパク質架橋酵素の立体構造を変えて肝がん幹細胞を制する-

理化学研究所
高エネルギー加速器研究機構

概要

理化学研究所(理研)生命医科学研究センター細胞機能変換技術研究チームの秦咸陽研究員、鈴木治和チームリーダー、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の清水伸隆教授らの国際共同研究グループは、世界初の肝がん再発予防薬として期待される「非環式レチノイド(一般名:ペレチノイン)」がタンパク質架橋酵素トランスグルタミナーゼ(TG2)に結合することを発見しました。

本研究成果は、肝がん治療後の再発を予防する補助療法の開発やタンパク質架橋酵素の活性制御のために、非環式レチノイドを構造基盤とした創薬研究に貢献すると期待できます。
これまで非環式レチノイドの作用には異常細胞の増殖シグナルを抑制することなどが知られていましたが、実際にその作用に非環式レチノイドがどのように関わっているのか、特にどのタンパク質と結合するのかは明らかではありませんでした。

今回、国際共同研究グループは非環式レチノイドのイソプレン側鎖とカルボキシ基末端がTG2と結合することで、TG2の立体構造を変化させ、そのタンパク質架橋酵素活性を阻害することを明らかにしました。さらにTG2阻害剤が肝がん細胞の幹細胞化と細胞増殖を特異的に阻害することを見いだし、TG2の分子標的としてヘパラン硫酸シグナル経路を同定しました。

この共同研究には物質構造科学研究所の清水伸隆教授、米澤健人研究員(研究当時)が参加し、フォトンファクトリーBL-10CでX線小角散乱実験を行いました。

本研究は、科学雑誌『Cell Death & Disease』オンライン版(6月13日付:日本時間6月13日)に掲載されました。

お問い合わせ先

高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
Tel : 029-879-6047
e-mail : press@kek.jp

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。