コンデンサーの極板間の電場と電磁波の電場は別物 -100年続いた混乱を解消し、電磁波発生の安易な説明を正す-

大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構

概要

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所 低速陽電子実験施設の兵頭俊夫協力研究員(東京大学名誉教授)は、平行平板コンデンサーの極板の電荷による電場の変動(変位電流)は磁場を作らないという正しい認識が定着していない要因を指摘し、その詳細を解明することで正しい認識を定着させるための論文を発表しました。

コンデンサーの極板の電荷による電場が変動しても磁場を作らないことは100年前に証明されているのですが、なかなか常識にならず、現在でも「平行平板コンデンサーの極板の間で変化する電場が極板間やまわりに作る磁場」が、電磁波が発生するしくみの説明の前置きとされているのを見かけることがあります。この状況が100年も続いてしまった要因を以下の[1]~[3]のように解明し、正しい理解に至るための要点を示しました。

[1]電場にクーロン電場と誘導電場があることは知っていても、マクスウェル方程式の電場がそれらの和であり、見えないところで別々に電荷の保存と電磁波の存在を独立に担っていることへの認識が不十分であること、

[2]磁場の計算に使われるアンペール-マクスウェルの法則が因果関係の式と誤認されていること、

[3]アンペール-マクスウェルの法則を用いた磁場の計算が与える第一印象から、誤った因果関係をよみとってしまうこと
これらに加えて、実際に流れている通常の電流だけで極板間の磁場を説明する具体的な計算が比較的最近まで行われなかったことも、長い間正しい認識が広まらなかった要因だろうと指摘しました。

本研究は、9月23日、European Journal of Physicsにonline 掲載されました。

本研究成果のポイント

○コンデンサーに交流をかけたときに極板間にできる磁場を極板間の変動する電場がつくっているという記述には誤解がある。この指摘は100年前からあったが、あまり注目されなかった。

○「相関関係」に過ぎないのに「因果関係」と間違うことは統計の解釈でもよく起きるが、似たことが物理現象を表す法則の解釈でも起きている。

○これまでの論点を整理した論文筆者は、電場には2種類あることに注意することで、コンデンサーの極板の電荷が作る電場と電磁波の中の電場とは異なることを理解できるとしている。

問合せ先

高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
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e-mail: press@kek.jp

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