有機トランジスタの動きを動画に -電子の流れをイメージング-

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
国立大学法人筑波大学

概 要

高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の福本恵紀 特任准教授は、筑波大学 数理物質系の山田洋一 准教授・同 応用理工学学位プログラム 修士2年の竹入総一郎氏らと共同で、フェムト秒パルスレーザーを励起光源とする光電子顕微鏡法(フェムト秒光電子顕微鏡)を用い、トランジスタの動作環境下における伝導電子の動きの可視化に世界で初めて成功した。

物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の早川竜馬 主幹研究員と若山裕副拠点長らが開発した、2種類の有機材料を利用することで、室温で負性抵抗を示すアンチアンバイポーラートランジスタ(AAT)は、従来の有機集積回路の性能を飛躍的に向上させる多値論理回路へ応用できるため、近年注目されている。この負性抵抗トランジスタでは、半導体界面(n型半導体とp型半導体が形成する界面)が電子の流れを制御するバルブに相当する。その界面の役割を可視化することにより、動作原理の解明に成功した。新規に開発されたトランジスタの動作原理を、これまでになかった装置で解明したこの成果の社会的なインパクトは大きい。有機トランジスタだけでなく、太陽電池、発光素子などその他の半導体デバイスに適用できることが期待される。

この研究成果は、Advanced Materials誌オンライン版に5月30日掲載された。

本研究成果のポイント

○有機半導体中の電子を高効率で検出できるフェムト秒光電子顕微鏡装置の開発
○有機トランジスタが動作するときの電子の動きを初めて可視化し、動画作製
○多値演算素子として期待される有機アンチアンバイポーラートランジスタの
動作原理を解明
○フェムト秒光電子顕微鏡装置は、多くの半導体デバイスに適用されると期待

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