ファンデルワールス力による “つよく”・“しなやか”な新しい結合 -強磁性トンネル接合素子の構成材料として グラフェン二次元物質/規則合金の異種結晶界面に期待-

(a)偏光した軟X線を用いた深さ分解XMCDの測定セットアップの模式図 [測定はKEKで行われた] (b) 検出深さを0.25 nmから2.5 nmまで変えたXMCDスペクトル (c) 界面

東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター
東北大学電気通信研究所
高エネルギー加速器研究機構
神戸大学
東京工業大学
早稲田大学
パリ-サクレー大学
フランス国立科学研究センター

概要

情報機器でのエネルギー消費増大問題を解決するために、計算機用の高性能な不揮発性磁気メモリ(MRAM)の開発が求められています。東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター、高エネルギー加速器研究機構(KEK) 物質構造科学研究所、東北大学電気通信研究所、神戸大学、東京工業大学、早稲田大学、パリ-サクレー大学、フランス国立研究センターの国内6機関・国外2機関のそれぞれが得意とする専門分野を学際的に協働することにより、六方晶系の二次元物質(グラフェン)と正方晶系の規則合金*(L10-FePd)の結晶系の異なる界面(異種結晶界面)を、ファンデルワールス力により”しなやか”に結合させ、かつ界面電子密度の増加により”つよい”混成軌道を誘起させることに成功しました。また、KEKフォトンファクトリーのBL-16に設置されている深さ分解X線磁気円二色性(XMCD) 装置を用いて界面付近の磁気状態を調べ、界面垂直磁気異方性が出現していることを明らかにしました。さらに、直接観察実験と理論計算の両方からグラフェン/L10-FePdの異種結晶界面の原子位置を正確に決定することに成功しました。本研究により、界面磁気異方性とL10-FePdのもつ高い結晶磁気異方性の両方を利用する道筋が示され、X nm世代のMRAM用の微小な強磁性トンネル接合(MTJ)素子への利用が期待されます。

本研究成果は、米国化学学会発行の科学誌 ACS Nanoの2022 年 2月 28日(米国東部標準時EST)にオンライン掲載されました。

本研究成果のポイント

●ファンデルワールス力により、異なる結晶界面を“つよく”・“しなやか”に結合できることを発見
●グラフェン/FePd規則合金の異なる結晶界面の原子位置を理論と実験により正確に決定
●グラフェン/FePd規則合金の異なる結晶界面に垂直磁気異方性が誘起されることを発見
●超高密度(X nm世代)MRAMの記録層への応用に期待

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