KEKに世界トップレベルの国際研究拠点が発足! ~宇宙・素粒子研究の今後の進展に期待~

羽澄昌史教授(左)と山内正則機構長(右)

KEKはこのほど、宇宙・素粒子研究のための新たな世界トップレベルの国際研究拠点を立ち上げることになりました。宇宙・素粒子研究の進展に貢献することが期待される、量子場計測システムに関する国際研究拠点です。カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli-IPMU)をはじめ、文部科学省が推進する世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の14番目の国際研究拠点として採択されました。

新規に立ち上げる国際研究拠点の正式名称は「International Center for Quantum-field Measurement Systems for Studies of the Universe and Particles(量子場計測システム国際拠点)」で、略称は「QUP」です。拠点長は、KEK素粒子原子核研究所の教授であり、宇宙航空研究開発機構(JAXA)主導の宇宙マイクロ波背景放射(CMB)偏光観測衛星「LiteBIRD」の主任研究者である羽澄昌史教授です。羽澄教授はこれまでKEKのBelle実験をはじめ、宇宙論や素粒子物理学のさまざまな国際プロジェクトにも従事してきました。

QUPは、素粒子物理学、宇宙物理学、物性物理学、計測科学、システム科学を融合し、量子場(生成・消滅する粒子や準粒子と付随する物理量を持つ時空)を計測する新しいシステムの発明・開発を行います。

「私はQUPの発足に胸が高鳴っています。拠点長として、主任研究員をはじめとする研究者の方々の飛躍的な挑戦をサポートしたいと思います。また、トヨタグループの研究協力を得て、社会実装に向けた新たな研究を行うことも楽しみです」と羽澄教授は語ります。そして「私自身も主任研究員の一人として、私が発案したQUPの旗艦プロジェクトであるLiteBIRD衛星に取り組みます」と続けます。

KEKの山内正則機構長は今回の動きについて「KEKはQUPのミッションを強力にサポートします」と歓迎します。さらに「KEKの周辺には、QUPの活動に興味を持つ研究グループがたくさんあります。そのようなグループとのコラボレーションも有益です。QUPの成果がKEKの研究全体を大きく後押しすることを期待しています」と述べます。

QUPは、量子場測定のグローバル性と多様性を特徴としています。基礎科学に加えて、産学の垣根を越えた学際的な研究を推進します。また、豊田中央研究所(愛知県)、JAXA宇宙科学研究所(神奈川県)、UCバークレー(米国)の3つのサテライトオフィスを開設し、世界トップレベルの研究機関との連携を進めます。

UCバークレーのLee教授は、次のように語ります。「バークレー校にサテライトを立ち上げて進めるのを楽しみにしています。私の専門のCMB観測をはじめ、さまざまな分野で大きな発見ができる可能性を秘めています」。

主任研究員は、KEKや上記3つのサテライトに加え、東北大、国立研究開発法人産業技術総合研究所、オックスフォード大(英国)など、国内外の研究機関から参加します。

オックスフォード大のBortoletto教授は「QUPは国境を越え、量子場測定の新しい開発を加速させます。この優秀なチームと一緒に発見の航海を始められることをうれしく思います」と語っています。

KEKは年内の活動開始を目指し、QUPの設立を進めています。