被ばく線量が少ない細胞では細胞質への被ばくの有無が生と死を分ける~放射光X線を用いた細胞局所照射技術で解明~

被ばく線量が少ない細胞では細胞質への被ばくの有無が生と死を分ける

 

公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター

一般財団法人電力中央研究所

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

国立大学法人福井大学

 

概要

公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター(エネ研、理事長:石塚博英、福井県敦賀市) 研究開発部 粒子線医療研究室の前田宗利主任研究員、一般財団法人電力中央研究所(電中研、理事長:松浦昌則)の冨田雅典上席研究員、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK、機構長:山内正則)の小林克己名誉教授およびKEK物質構造科学研究所の宇佐美徳子講師、国立大学法人福井大学(福井大、学長:上田孝典)の松本英樹シニアフェローらは共同で、最小5マイクロメートル(0.005ミリメートル)角から自由にビームのサイズを変えることのできる放射光X線マイクロビーム細胞照射技術を駆使した研究を進め、低線量の放射線にさらされたヒトやハムスターの細胞では、細胞核だけではなく細胞質にも放射線があたっていないとDNAに生じた放射線による損傷を直す仕組みが十分に働かないことを解明しました。

これまで、放射線の生物への影響を考える場合には細胞核の応答が重要視されてきましたが、被ばく線量が小さい場合には細胞質の応答も細胞の運命決定に大きく関与しており、細胞質への照射の有無による生と死の競合が生じることが、本研究によって初めて明らかになりました。これらの知見は、低線量放射線被ばくによる健康影響の解明につながるだけでなく、放射線によるがん治療の効果をさらに高める薬剤の開発にもつながる重要な成果といえます。

 

本研究成果は、2021年7月5日付けで、英国科学雑誌のScientific Reports(Springer Nature社)に掲載されました。なお、Springer Nature社は世界最大規模の学術書籍出版社で、Natureなどの有力な学術誌を多数発行しています。Scientific Reportsは、影響力のあるオープンアクセスの総合科学系学術誌の一つとして知られています。

 

本研究成果のポイント

◆放射光X線マイクロビームによって細胞全体、細胞核、細胞質を照射する細胞局所照射技術を駆使
◆細胞中の放射線にあたった領域(核や細胞質)に応じて細胞の運命(生死)が大きく変化
◆被ばく線量が少ない細胞では、細胞質に放射線があたっていないと細胞死が増大し、あたっていると生き残る細胞が増加する
◆この生死の競合メカニズムはDNA修復に関係するたんぱく質ATMにより制御されている

 


詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。