量子液晶と関係した新しい超伝導状態を発見

図2:鉄系超伝導体セレン化鉄のテルル置換量を変化させた際の電子状態の変化を表す。赤丸が超伝導状態へ変化する温度、青丸及び水色三角で量子液晶状態へ変化する温度を表す。右図は縦軸のみを拡大表示したもので、量子液晶状態へ変化する温度が絶対零度に近づく置換量付近において、超伝導転移温度が上昇する振る舞いを見ることができる。

東京大学
 高エネルギー加速器研究機構

概要

東京大学大学院新領域創成科学研究科の向笠清隆大学院生、松浦康平大学院生(研究当時)、橋本顕一郎准教授、芝内孝禎教授、同物性研究所の上床美也教授らは、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の熊井玲児教授と共同で、鉄系超伝導体において、量子液晶状態と密接に関係する新しい超伝導状態を発見しました。量子液晶とは、量子力学的な効果によって物質中に現れる、液晶に類似した電子状態を指します。この新しい超伝導状態は、これまで知られていた磁性と関係した超伝導状態とは異なるものであり、鉄系超伝導体のみならず銅酸化物超伝導体などの高温超伝導について、発現機構を理解する上で重要な手がかりとなります。

本研究成果は2021年1月15日付けで、英国科学誌 Nature Communications にオンライン掲載されました。

研究成果のポイント

◆鉄系超伝導体において、量子液晶状態と密接に関係する新しい超伝導状態を発見した。
◆セレン化鉄において元素置換量を系統的に変化させて圧力実験を行った結果、この物質における超伝導が、鉄系で一般的な磁性ではなく、量子液晶状態と密接に関係することを発見した。
◆鉄系超伝導体や銅酸化物超伝導体において高温超伝導が発現する機構を解明する鍵となる。

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。