
KEK特別栄誉教授で、2009年にノーベル化学賞を受賞したAda Yonath(アダ・ヨナット)博士が、2026年8月31日に87歳で逝去されました。
ヨナット博士は、細胞内でタンパク質をつくる「リボソーム」の構造と働きを原子レベルで解明し、生命科学の発展に大きく貢献しました。
KEKの放射光実験施設フォトンファクトリー(PF)では、1980年代から10年以上にわたって実験を行い、リボソームの構造解明につながる研究を進めました。KEKは2010年、その顕著な功績をたたえ、特別栄誉教授の称号を授与しました。2023年には再びPFを訪れ、かつて研究をともにした研究者たちと再会しました。
長年にわたるご功績に深く敬意を表し、謹んで哀悼の意を表します。
関係者からの追悼の言葉
浅井 祥仁 KEK 機構長
ヨナット博士は、KEKのフォトンファクトリー(PF)を長年にわたって利用され、リボソームの構造解明という画期的な研究を進められました。その成果により、生命の基本的な仕組みについての理解を大きく前進させ、生命科学の発展に多大な足跡を残されました。
こうしたご功績とKEKへの長年にわたるご貢献をたたえ、2010年にはKEK特別栄誉教授の称号をお贈りしました。
ノーベル賞受賞後も折に触れてKEKを訪れ、ご自身の経験を伝えるとともに、若い研究者たちを温かく励ましてくださいました。困難な研究課題にも強い信念を持って挑み続けたヨナット博士の姿勢は、多くの研究者に勇気を与え、今も大切な指針となっています。
ヨナット博士の志を受け継ぎ、KEKとPFは、これからも新しい研究への挑戦を支え、次の時代を切り拓く若い研究者たちを育んでまいります。
公益財団法人 高輝度光科学研究センター 中川 敦史理事長
2009年にノーベル化学賞を受賞されたイスラエル・ワイツマン科学研究所のAda Yonath博士が、2026年8月31日、87歳でご逝去されました。2023年9月に京都でお会いし、昨年末にもメールでやり取りをしていたことから、突然の訃報にいまだ信じられない思いです。
Yonath博士は、故・坂部知平先生が開発した巨大分子用ワイセンベルグカメラにいち早く注目され、BL-6A2(当時)が共同利用に公開された1987年から約10年間、PFで実験されました。放射線損傷の激しいリボソーム結晶の測定のために、巨大なガラス製の低温窒素ガス吹付装置をドイツから持ち込み、試行錯誤を重ねておられた姿が思い出されます。また、PFにイメージングプレートの読み取り装置がなかった頃、Yonath博士や研究室のメンバーとともに、東光台のERATO宝谷プロジェクトの難波啓一先生の研究室で、一晩を過ごしたことも懐かしい思い出です。
リボソームの原子構造解析が夢であった時代からこの困難な課題に挑み続け、その後のリボソーム結晶学への道を切り拓いた、まさにパイオニアでした。
長年にわたる科学への多大な貢献に深い敬意を表するとともに、心よりご冥福をお祈り申し上げます。