超高線量環境下で動作するWi-Fiチップの開発に成功

より革新的な原子力発電所の廃炉作業実現へ

東京科学大学
高エネルギー加速器研究機構

ポイント

  • 極めて過酷な放射線環境である原子炉内部では、一般的な無線通信機器は短期間で性能劣化を引き起こす可能性があり、無線ネットワーク導入の大きな障壁となってきた
  • シリコンCMOSプロセスを用いて放射線耐性を飛躍的に向上させた回路構成を提案し、500 kGyの超高線量環境でも壊れないWi-Fiチップの開発に成功
  • 原子炉内部の通信を無線化することで、より安全で効率的な廃炉作業に貢献するとともに、宇宙や核融合など将来の国家的プロジェクトにも展開可能

概要

東京科学大学(Science Tokyo) 総合研究院 未来産業技術研究所の成清泰斗大学院生、白根篤史准教授、高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所の宮原正也准教授らは、シリコンCMOSプロセスを用いて超高線量環境下で動作するWi-Fiチップを開発しました。東京電力福島第一原子力発電所事故に伴う廃炉作業を安全に効率よく行うため、作業員の被ばくリスクを低減する無線ネットワークインフラの構築が重要な技術課題となっています。しかし、原子炉内部は極めて過酷な放射線環境にさらされており、一般的な無線通信機器や電子部品は短期間で故障や性能劣化を引き起こす可能性があり、無線ネットワーク導入の大きな障壁となってきました。本研究では一般的な高周波回路設計とは異なり、放射線耐性を実現するために、使用するトランジスタの数を最小限にし、かつ可能な限り大きいトランジスタサイズを用いることで、通信性能と放射線耐性を両立させる革新的な回路構成を提案しました。実際に東京科学大学においてガンマ線の照射試験を行い、放射線耐性が求められる宇宙用半導体の数百Gy(グレイ)のTIDを1,000倍以上上回る原子炉内部を想定した500 kGyの放射線照射後おいても、開発したWi-Fiチップは性能劣化がほとんど生じず、正常な無線通信に成功しました。さらに、通信性能も一般的なWi-Fiチップに劣らないレベルを達成し、提案した回路構成が原子炉内部で高い性能の無線通信を実現可能であることを示しました。

本研究の成果は、廃炉作業の着実な前進を支えるとともに、宇宙や核融合など将来の国家的プロジェクトにも展開可能な基盤技術として、日本の安全と技術力を支える重要な役割を果たすことが期待されます。 本成果は、2026年2月15日~19日(米国太平洋時間)に米国サンフランシスコで開催される国際会議「International Solid-State Circuits Conference 2026(ISSCC2026、国際固体素子回路会議)」で発表されます。

図. 提案技術と福島原発における課題

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

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