
欧州合同原子核研究機関(CERN)とKEKの各委員が共同研究の進捗状況などを報告し、今後の協力について議論する「KEK-CERN委員会」が11月19日(水)にKEKつくばキャンパスで開催されました。本委員会は、協定に基づき、両機関の役員・所長級メンバーから構成される委員により、毎年CERNとKEKで交互に開催されているもので、今回で20回目の開催となります。CERNからは10名(うち6名はオンライン参加)、KEKからは9名(うち1名がオンライン参加)が出席しました。
KEKとCERNの協力関係は、CERNで行われている大型ハドロン衝突型加速器(LHC)プロジェクトへの日本の参加が始まった1994年に始まり、その後、LHCの電磁石製造やLHCの国際共同実験であるATLAS実験への参画を通して、両機関は深い信頼関係を築いてきました。現在は、LHC加速器高輝度化計画(HL-LHC)、KEKのSuperKEKBにおける多国籍参画プロジェクト傘下での研究、次世代の直線衝突型加速器などのさまざまなプロジェクトにおいて、CERNとの共同研究開発を推進しています。また、両機関の連携を一層強化するため、2014年からはそれぞれに分室を設置しています。 本委員会では、これまでの協力関係に関するATLAS実験の進捗状況や、HL-LHC建設に向けたビーム分離用超伝導偏向磁石(D1:superconducting beam- separation dipole)およびクエンチ保護ヒータ電源の状況に加え、J-PARCでの陽子加速器開発における協力計画、CERNの将来計画候補の一つとして検討されている円形衝突型加速器(FCC:Future Circular Collider)の進捗状況、さらにCERN 量子技術イニシアチブ(QTI:Quantum Technology Initiativ)における量子技術の取り組みと協力可能性など、将来の協力関係を視野に入れた幅広いテーマについて、各グループを代表する研究者が報告を行いました。

委員会の開催に先立ち、11月18日(火)につくばキャンパスの視察ツアーを行い、一行は、STF(Superconducting RF Test Facility)、超伝導加速器利用促進化推進(COI)棟や測定器開発テストビームライン、量子場計測システム国際拠点(QUP)の実験室が設置されている富士実験棟、Belle II測定器が設置されている筑波実験棟を視察しました。担当研究者からは、最新技術や最新設備の紹介に加え、プロジェクトの進捗状況や国際共同研究の取り組みについて詳細な説明が行われ、一行は熱心に耳を傾けていました。将来計画に関する質問を含め、参加者からは多くの質問が寄せられ、活発な議論が繰り広げられました。



