国立大学法人横浜国立大学
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
国立大学法人横浜国立大学(学長:梅原 出、以下「横浜国立大学」)先端科学高等研究院(高等研究院長:梅原 出、以下「IAS」)と大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長:浅井 祥仁、以下「KEK」)は、2025年10月17日に量子科学に関する研究を推進するための連携協定を締結しました。期間は2025年11月1日から2031年3月31日まで有効とします。 本協定のもと両機関の強みを最大限に発揮し、量子科学に基づく未来アプリケーション創出を目指した基盤研究・実用化研究を加速していきます。
世界的に注目されている量子技術は、未来社会に向けて革新的なイノベーションをもたらすことが期待されており、世界中で大きな研究開発投資が行われています。特に、量子ネットワーク技術は、量子コンピュータ、量子センサーを量子通信で安全に繋ぐ次世代のネットワーク技術として注目され、その基盤要素となる量子トランスデューサ、量子ルータ、量子中継器などの部品開発、材料開発、システム開発が世界各国で進められています。
横浜国立大学IASは、2020年に設立された量子情報研究センター(注1)を中心に、ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心、NVセンター)(注2)を用いた量子インターネット・量子コンピュータにかかわる実践研究や超伝導素子を用いた極低消費エネルギー集積回路の研究で顕著な成果を上げています。
KEKは、最先端の大型粒子加速器を用いて、宇宙創生の謎や物質や生命の根源など、人類の知に貢献する基礎研究を推進しており、2021年に設立された量子場計測システムに関する国際研究拠点(注3)は、量子場を計測する新しいシステムを発明・開発し、高次の融合研究と新たな社会的価値の創出を目指しています。
両機関は、相互の研究施設やノウハウを共有した研究開発や人事交流等を通して双方の強みを最大限発揮し、量子科学基盤研究を強力に推進することを目的として連携協定を締結します。本締結により、未来の安全なネットワーク社会実現に向けた量子インターフェースや素粒子・高エネルギー分野における高度に進化した量子制御技術・量子検出技術・量子材料技術等の実用化研究をより一層加速し、量子Web(注4)のような未来アプリケーション創出を目指すとともに「量子人材」の育成も図り、世界トップを目指す研究組織として量子技術による未来社会の発展に貢献していきます。
注1:2020年10月にIASに設立された量子情報研究センター(QIC)は、内閣府および国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が推進するムーンショット型研究開発事業「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータを実現」、総務省委託研究事業「ICT重点技術の研究開発プロジェクト」や先端国際共同研究推進事業(ASPIRE)の日本-ドイツ共同研究「量子技術」領域を受託しています。
注2:ダイヤモンド中の窒素空孔中心(NV中心、NVセンター)とは、ダイヤモンド中の隣接した二つの炭素において、一つの炭素が窒素(N)に、もう一つの炭素が空孔(V)に置換されたものです。NV中心は、電子スピンや核スピンを持ち、これがスピン量子ビットとして用いられます。そのメモリ時間は最大で1秒を超えるほどで、超伝導量子ビットや半導体量子ドットなどの他の材料に比べて非常に長いことが知られており、常温で動作することも特徴です。
注3: 2021年12月にKEKに設立された量子場計測システム国際拠点(QUP)は、文部科学省が推進する世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の14番目の国際研究拠点として採択されました。
注4: 現在のインターネットがWorld Wide Web(WWW、あるいはWeb)というハイパーテキストシステムの開発により劇的な普及を遂げたように、将来の量子インターネットにおいても新しい「量子Webサービス」と呼ぶべきキラーアプリの登場が発展の鍵を握ると考えられます。
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