大阪大学
高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター
科学技術振興機構
研究成果のポイント
- 分子の“カギ穴とカギ”(ホスト–ゲスト)を利用した、繰り返し貼ってはがせる新しい高分子接着材料を開発。
- ホストーゲスト錯体を用いた接着は、なぜ繰り返し貼ってはがすことができるのか、そのメカニズムは十分に理解されていなかったが、中性子を用いて接着界面を可視化することで、そのメカニズムを解明。
- オンデマンドに分解可能かつ繰り返し使用できる接着剤として、精密機器の製造プロセスにおける歩留まり改善や使用後の分別・リサイクルを容易化し、コスト・廃棄物削減に貢献することに期待。
概要
大阪大学大学院理学研究科の和田拓真さん(研究当時:大学院生)、山岡賢司助教、髙島義徳教授らの研究グループは、高分子界面におけるホストーゲスト錯体の形成を制御することで、外部刺激による易解体(いかいたい)と再接着を可能にする新規高分子接着材料を開発しました(図)。

接着界面におけるナノ構造の可視化.
これまでホストーゲスト錯体の分子認識を用いた接着は注目されてきましたが、なぜ繰り返し貼ったりはがしたりできるのか、そのメカニズムは十分に理解されていませんでした。そこで、中性子反射率法を用いて接着界面をナノスケールで可視化することにより、錯体形成が高分子鎖の拡散を抑える事に反して接着は強くなるという一見矛盾する現象を世界で初めて明らかにしました。
本研究で開発した接着技術は、オンデマンドで分解可能かつ繰り返し使用できる接着剤として、組立時の不良低減による歩留まりの改善や使用後の複合材料製品における分別回収・リサイクルを可能にし、資源循環型社会の実現に貢献することが期待されます。
J-PARC 物質・生命科学実験施設(MLF)(課題番号:2023B0322)で中性子反射率測定の一部が行われ、KEKの瀬戸秀紀教授(現在、同機構名誉教授)、山田雅子助教が実験支援しました。
本研究成果は、Wiley誌「Advanced Materials」に、10月3日(金)に公開されました。
詳しくは プレスリリース をご参照ください。
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