SuperKEKBが改良を終え再始動しました

コントロールルームで機器を調整している様子

2024年1月、SuperKEKBとBelle II測定器が約1年半にわたった大規模な改良を終えて、本格的な実験再開に向け動き出しました。SuperKEKBはKEKつくばキャンパスにある電子陽電子衝突型加速器、 Belle II測定器はその素粒子反応を測定するための装置です。

SuperKEKB加速器は、電子ビームと陽電子ビームをほぼ光の速さまで加速し衝突させる、周長約3キロメートルの円形加速器です。衝突点に設置されたBelle II測定器で衝突後の素粒子反応を捉え、宇宙創生の謎を解く鍵となる新しい物理現象を研究しています。

SuperKEKB加速器全体の模式図

SuperKEKB加速器は2016年に試運転を開始。2019年に本格的な物理解析のための運転を開始し、2020年6月にはルミノシティ(衝突性能)の世界最高記録を打ち立てました。SuperKEKB加速器はその後も記録を更新し続けていますが、運転を続ける中で課題も発見されました。

これらの課題を解決し、さらなるルミノシティ向上を目指した改良を行うため、2022年6月から約1年半にわたり運転を停止していました。今回、ビームを強く絞った場合にもビームの品質が悪化しないよう改良を行いました。具体的には、ビームの不安定性を抑えるための陽電子リングへの「非線形コリメータ」の導入、電子ビームの入射点の改造、入射加速器へのパルス磁石の設置などが行われました。特に、非線形コリメータの導入は世界初の試みです。これにより、バックグラウンドノイズを抑えつつルミノシティを向上し、測定の精度が上がることを期待しています。

大電流のビームを十分な品質で安定的に供給し、前人未到のルミノシティを達成することは加速器グループの挑戦です。今回の改良で実際にどのくらいの効果があったのかは、今後運転調整を重ねながら確認することになります。人類未踏のルミノシティを得るために、すべての調整が世界初の試みとなります。今後、1カ月程度加速器のさまざまな機器の調整を行い、物理実験に備えます。

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