KEKとCERN、国際リニアコライダー研究開発に関する協定に署名

山内正則KEK機構長(左)とファビオラ・ジャノッティCERN所長(CERN提供)

KEKと欧州合同原子核研究機関(CERN)は7月7日、国際リニアコライダー(ILC)の研究開発に関する新たな枠組み、「ILCテクノロジーネットワーク(ITN)」に関する協定に署名しました。

CERNを訪問中の山内正則KEK機構長とファビオラ・ジャノッティCERN所長が署名しました。この中では、CERNはITNの研究に協力するとともに、欧州の他の研究機関のハブとしての役割を果たすことが述べられています。

ITNはILCの加速器技術開発の重点事項を国際共同で進める枠組みで、KEKとILC国際推進チーム(IDT)の主導で提案されました。本枠組みは、KEKと参加研究機関間の二機関協力協定締結により構築されます。今回の署名は、同協定の第1号となるものです。KEKは今後、他の研究機関とも同様の協定を締結し、ITNの枠組みを広げていきたい考えです。

山内正則KEK機構長(左)とファビオラ・ジャノッティCERN所長(CERN提供)

・国際リニアコライダー(International Linear Collider: ILC)
国際リニアコライダー(ILC)は、国際協力で実現を目指す次世代の直線型衝突型加速器です。全長約20キロメートルの地下トンネルに設置した超伝導加速器で電子と陽電子を衝突させ、宇宙の始まりから1兆分の1 秒後を再現。そこで起きる現象を徹底的に調べ、未知の物理法則を解明し、自然の理解を新たな段階へと進めることが目的です。素粒子物理学の最重要課題のひとつは、欧州合同原子核研究機関(CERN)のLHC加速器で2012年に発見されたヒッグス粒子の性質解明であり、ヒッグス粒子を大量生成して詳しく調べる「ヒッグス・ファクトリー」の早期実現の重要性が、世界の研究者の共通認識となっています。ILCはもっとも成熟したヒッグス・ファクトリー計画として世界から期待されています。KEKではILC実現に向け様々な取り組みを行っています。

・ILC国際推進チーム(ILC International Development Team: IDT)
2020年8月に、国際将来加速器委員会(International Committee for Future Accelerators: ICFA)が設立した、ILCの準備段階への移行を促進するための国際研究者組織。2021年6月にIDTが公表したILC準備研究所の設立の提案など、ILCプロジェクトの課題に対する文科省有識者会議の議論のまとめを受け、KEKとともにITNの設立に向けた調整を行っています。