集まれ!分子

~含水溶液中における疎水性物質の集合状態を観察~

神奈川大学
大阪大学
東京理科大学
高エネルギー加速器研究機構
日本原子力研究開発機構
J-PARCセンター

課題

水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中で疎水性有機分子が集合体を形成することが広く知られています。このような溶液の水とTHFの比率を変化させると、溶液の性質が変化することがしばしば観測されています。しかしながら、集合状態がどのように変化し、性質の変化に影響を与えるのかについての詳細は明確ではありませんでした。

成果

今回、水-THF混合溶媒中における疎水性の発光分子について、含水率を変化させて様々な測定を行いました。その結果、溶媒中の水の体積分率が約50%では分子が「緩い集合体」を形成し、水の割合が増加するにしたがって「密な集合体」へと変化することを明らかにしました。また、このような集合状態変化と発光強度変化との対応も明らかにしました。

展望

今回得られた知見は、有機分子の集合体形成制御技術への応用が想定されます。具体的には、有機ELや有機レーザーなどの表示・照明デバイスの効率向上や、薬物輸送システムの効率化による薬効の改善など、広汎な応用が期待できます。

概要

神奈川大学理学部 辻勇人教授らの研究グループは、大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻 中畑雅樹助教、東京理科大学理学部第一部化学科 菱田真史准教授、高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 瀬戸秀紀教授、日本原子力研究開発機構物質科学研究センター 元川竜平マネージャーとの共同研究により、水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中に独自開発の疎水性発光分子が分散した系について様々な測定を行い、溶媒中の水の割合を変化させると発光分子を含む集合体のサイズと集合状態が変化し、それが発光強度の変化と相関することを示しました。

今回得られた知見に基づいて疎水性分子の集合状態を自在に制御できれば、有機ELや有機レーザー等の発光デバイスの効率向上や、薬物送達(ドラッグデリバリー)システムなどへの応用が期待できます。

本研究成果は、2023年12月7日(米国時間)に米国化学会の学術誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」誌にてオンライン先行公開されました。
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpclett.3c02882)。

本研究は、文部科学省科研費補助金 新学術領域研究 水圏機能材料:環境に調和・応答するマテリアル構築学の創成「水圏機能材料創製のための機能分子の精密合成」「水圏機能材料の先端構造・状態解析」「水圏機能材料の電子・イオン機能開拓」、国際共同研究加速基金(海外連携研究)などにより実施されました。

お問い合わせ先

高エネルギー加速器研究機構(KEK)広報室
Tel : 029-879-6047
e-mail : press@kek.jp

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