「グザイ核」の内部構造、ついに観測成功 原子核の成り立ちや中性子星の構造の理解に新たな知見

「グザイ核」の内部構造、ついに観測成功
図1. 写真乾板で観測された新たなグザイ核事象(イラワジ事象)の顕微鏡写真とそのイメージ図

国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
国立大学法人 東北大学
J-PARCセンター
大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構

概要

岐阜大学教育学部・工学研究科 仲澤和馬シニア教授、吉本雅浩学振特別研究員、東北大学大学院理学研究科 吉田純也助教、高エネルギー加速器研究機構・素粒子原子核研究所 高橋俊行教授らの国際共同研究グループは、グザイマイナス(ストレンジクォークを2つ持つ粒子)を含む超原子核である「グザイ核」を新たに観測しました。このグザイ核は、大強度陽子加速器施設(J-PARC)を利用したJ-PARC E07実験で生成されました。この事象は、発見した岐阜大留学生の母国ミャンマーの雄大な河川にちなんで「イラワジ事象(IRRAWADDY event)」と命名されました。解析の結果、イラワジ事象はグザイマイナス粒子が窒素14原子核に強い引力(束縛エネルギー)で束縛した状態とわかり、その大きさは2021年2月に同研究グループが公表した事象(伊吹事象)の5倍以上です。このことから、グザイ粒子と原子核との間には電磁気的な力(クーロン力)をはるかに超えた強い相互作用(核力)による引力がはたらくことが確定し、グザイ核の内部の準位構造の観測にも世界で初めて成功しました。今回のグザイ核の発見は、従来の多くの理論では予期できなかったものであり、今後新たな理論の構築が期待されます。またグザイマイナス粒子などのストレンジクォークを持つ粒子(ハイペロン)は、この宇宙で最も密度の高い天体であり巨大な原子核といわれる中性子星内に出現すると考えられており、本研究成果は中性子星を理解する上で大きな役割を果たします。

本研究成果は、日本時間2021年7月23日(金)17時にオンライン学術誌:Progress of Theoretical and Experimental Physics (PTEP) 誌で公開されました。

本研究成果のポイント

◆J-PARCで実施した過去最大規模のグザイ核探索実験により、史上最も大きな束縛エネルギーを示すグザイ核事象(イラワジ事象)を観測した。その束縛エネルギーは、2021年2月に同研究グループが報告したグザイ核事象(伊吹事象)のものよりも5倍以上大きい。
◆イラワジ事象は、グザイマイナス粒子と原子核が最も深く束縛したs状態だったことを示している。この状態と、p状態を示す伊吹事象を合わせて、グザイ核内部の準位構造が明らかになった。
◆グザイ核の準位構造から、グザイマイナス粒子と陽子・中性子との間に働く力の大きさがわかり、これは原子核がクォークからどのように成り立つのかを紐解くとともに、この宇宙で最高密度の中性子星の内部構造の理解に繋がる重要な知見である。

詳しくは  プレスリリース  をご参照ください。