希土類を含まない世界最高クラスの酸素イオン伝導体を発見-燃料電池・センサー・電子材料等の開発を加速-

図1 発見したBa7Nb3.9Mo1.1O20.05の高い酸化物イオン伝導度(右図の赤丸と赤線)、本質的な酸素欠損層の原子配列(左)とイオン移動経路(中央)  ©Masatomo Yashima and Nature Publishing Group.

東京工業大学
インペリアルカレッジロンドン
高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター

概要

東京工業大学 理学院 化学系の八島正知教授らの研究グループは、従来の材料を凌駕する世界最高クラスの酸化物イオン伝導度(酸素イオン伝導度ともいう)を示す新しい酸化物イオン伝導体(酸素イオン伝導体、あるいはO2伝導体ともいう)Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05を発見した。高温かつ広い酸素分圧範囲で、この新型イオン伝導体は非常に安定であることがわかった。従来の高酸化物イオン伝導体の多くは希土類、ビスマス、鉛、あるいはチタンを含む酸化物であり、還元雰囲気における安定性、毒性あるいは使える資源の量に難があった。発見したBa7Nb3.9Mo1.1O20.05はこれらの元素を含まず安定性、安全性および資源確保の点で優れている。さらに酸化物イオン伝導度が高くなる高温での結晶構造と酸化物イオンの拡散経路を実験により解明した。その結果、六方ペロブスカイト関連酸化物の結晶構造内の本質的な酸素欠損層の原子の隙間に存在する酸素(格子間酸素)とイオン移動経路の形成が高いイオン伝導度の原因であることがわかった。

なお本研究は、英国インペリアルカレッジロンドンのスキナー スティーブン(SKINNER Stephen J.)教授ら、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所/J-PARCセンターの神山崇教授らとの共同研究である。Ba7Nb3.9Mo1.1O20.05の結晶構造解析には、J-PARCの超高分解能中性子粉末回折装置SuperHRPDを用いた。

本研究成果は、2021年1月25日に英国の科学雑誌Nature Communications電子版に掲載された。

要点

〇希土類を含まない六方ペロブスカイト関連酸化物の酸素イオン伝導体を発見し、世界最高クラスの酸素イオン伝導度、高い安定性と安全性を実現
〇結晶構造とイオン拡散経路の解析により、高い酸素イオン伝導度の原因を解明
〇革新的な燃料電池、酸素分離膜、触媒、センサー、電子材料等の開発を促進してエネルギー・環境分野(SDGsの目標7の達成)に貢献すると期待

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