ミュオンを使ったその場観察の手法により水素貯蔵物質からの水素脱離反応の仕組みを観測

   
  • J-PARCセンター
  • 大学共同利用機関法人 高エネルギー加速器研究機構
  • 一般財団法人 総合科学研究機構

概要

総合科学研究機構(CROSS)の杉山 純 サイエンスコーディネータ(研究当時は株式会社豊田中央研究所 主監)、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の幸田 章宏 准教授らは、水素貯蔵材料の候補物質である水素化マグネシウムMgH2のミュオンスピン回転・緩和法(μSR法)測定を、極低温から水素脱離温度(条件によって異なるがおよそ400℃)をまたいだ高温までの幅広い温度領域で実施した。さらに、そのうちの比較的高温領域については、脱離した水素ガス圧力も同時測定した結果、水素脱離温度より低い温度において物質内で水素が拡散し始める様子を微視的に捉えることに成功した。

MgH2から水素を取り出すには高温で化合物が分解する反応を利用するため、いかに低温でこの反応を起こさせるかが重要な研究テーマとなっている。従来、粗大粒のMgH2試料を粉砕加工することで水素脱離温度が200℃程度低下することは知られていたが、今回の実験により、粉砕粒の表面から水素の脱離が進み、そうしてできた隙間に別の水素が移動し、順繰りに水素が動くことでスムーズに脱離するようになり、結果として脱離温度が低下するという水素脱離反応の仕組みが見えてきた。

この結果は物質内で脱離し始めた水素をいかに素早く取り除けるかが比較的低温での水素脱離反応に重要であることを示す。今後の類縁物質の実用化に向けて、水素脱離温度低下への取り組みに明瞭な指針を与える結果である。また、その場観察μSR法による水素・イオン伝導物質の研究展開を期待させる実験結果と言える。

この研究成果は、2019年3月26日に、「Sustainable Energy & Fuels」に掲載された。

研究成果のポイント

  • ◇水素貯蔵材料として期待されている水素化マグネシウム MgH2の物質内部での水素の動きをミュオンスピン回転・緩和法(μSR法)により微視的に観察することに成功した。

  • ◇MgH2を粉砕加工すると水素脱離温度が下がるのは、粉砕粒の表面からの水素の脱離が進むことで物質内での水素の拡散が促進されることによると分かった。

  • ◇本研究の成果により、今後の実用化に重要な水素脱離温度の制御に指針が与えられることとなった。

  • ◇J-PARCの大強度ミュオンビームを活用した「その場観察μSR法」により水素・イオン伝導物質の研究が進展することが期待される。

詳しくは プレスリリース をご参照ください。

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