2022/9/29 開催

日本のウェブが30歳、記念の音声生配信イベント開催しました

日本初のウェブサイト(再現)

私たちの生活に欠かせないインターネットのウェブ。実は、日本初のウェブサイト(ホームページ)を世界に向けて発信したのはKEKでした。9月30日でその日からちょうど30年となるのを記念し、KEKでは前日の29日午後9時から、音声生配信イベントを開催しました。

日本初のウェブサイトを作ったのは、当時KEKデータ処理センター(現・計算科学センター)の助手だった森田洋平さん(現・沖縄科学技術大学院大学シニアマネジャー)です。森田さんと当時センター長だった渡瀬芳行さんが1992年、スイスのジュネーブにある欧州合同原子核研究機関(CERN)を訪問し、CERNで「ウェブの生みの親」として知られるティム・バーナーズリー氏に会ったのがきっかけでした。

1年前に世界で初めてウェブを公開していたバーナーズリー氏は「これが世の中を変えるんだ。お前のところでもサーバーを立てろよ」と森田さんに言い、森田さんはCERNの端末室でHTMLファイルを作りました。それをKEKのサーバー上に置き、このKEKのアドレスをCERNのリンク集に加えてもらいました。これが日本で初めてのウェブサイトとなりました。1992年9月30日のことです。

KEKも取り組む高エネルギー物理学では、各国の研究者が何百人、時には何千人と集まって、巨大な実験装置の建設やそれを使った研究を行います。そのため積極的な情報交換が必要ですが、当時はいろいろなメーカーの独自規格のコンピューターが使われ、情報交換が難しくなっていました。その問題を解決するために考案されたのがウェブの仕組みでした。

森田さんは2005年、歴史的史料を保管しているCERNのアーカイブ室を訪問したとき、バーナーズリー氏が書いたメモを見つけました。「KEK」という文字が残されており、前後の記述から「KEKをリンクした」という意味と考えられています。

CERNを訪問した森田さん(2005年)
バーナーズリー氏が書いたメモ。「KEK」の文字が見える

このように最初は学術目的で生まれたウェブですが、現在はあらゆる分野で広く使われています。米調査会社スタティスタによると、2021年現在で、世界には18億8000万のウェブサイトがあるそうです。

KEKは今年、国連が定めた「持続可能な発展のための国際基礎科学年(The International Year of Basic Sciences for Sustainable Development、IYBSSD)」の趣旨に賛同し、日本から唯一の創設パートナーとして国内外の取組みを推進しています。

「持続可能な発展のための国際基礎科学年」のロゴ

基礎科学は、人類の知に貢献する一方で、思いもかけない形でイノベーションにつながることもよく知られていますが、短期的な成果を求める風潮のなかで、その重要性が忘れられがちでもあります。

しかし国連総会の決議は「基礎科学への認識を高め、教育を強化することが、持続可能な発展を達成し、世界中の人々の生活の質を向上させるために不可欠である」として重要性を強調しており、IYBSSD事務局も、基礎科学から生まれたイノベーションの例として、ウェブの仕組みを最初に挙げています。

日本のウェブが30歳になることを記念し、KEKでは9月29日午後9時から森田さんらを招き、ツイッターの音声生配信機能「スペース」を使って当時を振り返るイベントを開催しました。

音声アーカイブはこちらで10月末まで聴くことができます。

日本初のウェブサイトを発信したサーバーは、KEKつくばキャンパスの常設展示コミュニケーションプラザに展示されています。

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