市販のグリッド付き熱カソードを用いた低エミッタンス電子銃の開発

開催日時

2021/11/02 15:00 – 16:00

開催場所

3号館7階輪講室 及び Zoom

講演者

安積 隆夫氏 (QST)

言語

日本語

お問い合わせ

古川 和朗 (PHS 4316)


概要

グリッド付き熱カソードは取り扱いが容易であることから、多くの加速器施設で使用されてきた。しかしながら、グリッドのレンズ効果のため、2 mm \mrad以下の規格化エミッタンス が要求される軟X線FELでは使えないとされた経緯がある。我々はグリッド付き熱カソードの高保守性、長寿命といった優位性に着目し、これによる低エミッタンスビーム生成を検討した。グリッド近傍の電場歪みと電子軌道について、物理モデルによる解析とシミュレーションの両面から評価した。その結果、グリッドを通過する電子軌道がビーム軸に平行になる条件の存在し、このとき電子分布が均一でかつ最小エミッタンスを与えることを見出した。これは、わずか50kVのカソード・アノード電圧で実現でき、2 mm mrad以下/1nCの高品質ビーム生成できる。この低エミッタンスビームは、電子銃に直結した238MHz高周波空胴により、即座に500keVまで加速することで、空間電荷効果によるエミッタンス増大を回避する。以上のスキームに基づいて新型電子銃を製作し、実証試験において、シミュレーション結果と一致するビーム性能を確認した。
現在、建設が進められている次世代放射光施設の3GeV線型加速器では、この新型電子銃を装備した入射部が使用される。これに先立ち、プロトタイプ入射器(ニュースバル入射器)によるビーム性能試験が実施され、入射部においても所定の性能に到達していることを確認している。
本セミナーでは、新型電子銃の設計思想、シミュレーション計算、実証試験、プロトタイプ入射器におけるビームコミッショニングについて説明し、次世代放射光施設について(線型加速器を中心に)紹介する。