つくば国際会議場で2月7日に開催された「第9回茨城テックプラングランプリ」で、素粒子原子核研究所の牧村俊助先任技師率いるチーム「Tungsten Innovator」がファイナリストとして登壇し、パートナー企業賞である「三和ニードルベアリング賞」を受賞しました。
東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)では加速器で加速した強力な陽子ビームを「標的」に衝突させ、発生した粒子を実験に利用しています。牧村氏はミュオンと呼ばれる素粒子を生み出す標的を開発しています。標的には高い密度や強度が求められるため、タングステンの採用が検討されています。

ただし、タングステンには「高温になると脆くなる(再結晶脆化)」という致命的な欠点があります。この欠点を解決した強靭な材料を開発しようと牧村氏とタングステンの物語が始まりました。産学連携で構成されるチーム「Tungsten Innovator」は、独自に開発した技術により、1600℃の超高温に晒されても、粘り強さを保つ「超耐熱タングステン」の開発に成功しました。また、タングステンは「硬すぎて複雑な形に加工できない」という欠点も持ちます。この欠点を解決したアメのように300%も伸びて自由に形を作れる「超塑性タングステン」の開発にも成功しました。この2種類のタングステンは、さまざまな産業応用の可能性を秘めています。
タングステンは19世紀末から20世紀初頭にかけて、電球のフィラメントとして産業革命を支えました。Tungsten Innovatorは「超耐熱・超塑性タングステン」は、それに匹敵するほどの新たな産業革命2ndを引き起こすことができると考えています。

授賞式では、金属加工を手掛ける三和ニードルベアリング株式会社の島田淳執行役員より、「今日のプレゼンテーションを聞きタングステンの可能性を非常に強く感じました。ともに産業革命を起こし、新しい産業を切り開きたいと思い選出しました」と、熱いコメントが贈られました。
牧村氏が会場へ呼びかけた「産業革命2nd。ぜひ一緒にやりましょう!」という言葉通り、研究室で生まれた技術が、産業界の強力なパートナーを得て、世界を変える一歩を踏み出しました。
なおJ-PARCで発生する中性子ビームを利用して気候変動に強い作物を生み出す取り組みを行っている株式会社クォンタムフラワーズ&フーズ(QFF)もファイナリストに選ばれ、「日東電気グループ賞を受賞しました。

テックプラングランプリは、大学や研究機関で生まれた科学技術の「種」をビジネスとして発掘・育成するコンテストです。「知識製造」を掲げるリバネス(本社・東京、大阪)が主催し、各地域で開かれています。