「KEKフォトウォーク2025」審査結果のお知らせ 

6月22日に開催した「KEKフォトウォーク2025」の審査結果を、以下のとおりお知らせいたします。 

本フォトウォークは、世界15の研究機関が連携して実施する「グローバル・フィジクス・フォトウォーク」の一環として行われました。今回選ばれたKEK賞受賞作品3点は、KEKを代表する作品として、各国研究所の受賞作品とともにオンライン投票にエントリーされます。ぜひ、グローバル投票にもご参加ください。 

審査は、写真家やメディア関係者などで構成された審査員によって行われ、芸術的表現、構図の独創性、科学的魅力の伝わりやすさといった観点から選考しました。 
さらに、小林誠 KEK特別栄誉教授による「小林誠賞」、KEK事務局の選出する「奨励賞」にも設けられています。 

受賞者の皆さま、おめでとうございます。また、多くのご応募をいただき、誠にありがとうございました。 

KEKは今後も、このような取り組みを通じて、最先端の研究現場を社会に広く開放し、科学の魅力を伝えてまいります。 

受賞作品 

KEK賞
1位:「曲線」   撮影者:キツネツキ さん(写真家) 

KEK賞1位:「曲線」   撮影者:キツネツキさん(写真家)

作品概要
この地下道がゆっくりと曲線を描いている様子がわかり、その途方もなく終わりのない円運動を想像するとその壮大さの一端を感じることができた気がします。 

2位:「加速器と姫ホタル1」 撮影者:佐々木 能成 さん(作家) 

KEK賞2位:「加速器と姫ホタル1」 撮影者:佐々木 能成 さん(作家)

作品概要
ホタルは世界中に2000種以上いるそうですが、その中で発光するのは僅か十数種類だそうです。日本で有名なのは平家蛍と源氏蛍、そして姫蛍です。前二種は連続的に発光します。それに対して姫蛍はフラッシュのように鋭く点滅し、点々と軌跡を残します。姫蛍の光跡はスパークチェンバーやチェレンコフ管の荷電粒子の軌跡を彷彿とさせます。 

3位:「観測の詩学」 撮影者:保坂 昇寿 さん(会社役員・写真家) 

KEK賞3位:「観測の詩学」撮影者:保坂 昇寿 さん(会社役員・写真家)

作品概要
ビッグサイエンスの装置を撮影したことで、自分の写真の意味が変わりました。かつて写真は、世界との間に「疎外」を生むメディアでした。しかし今は、「世界を再発見し再構築する手段」だと考えています。SuperKEKB加速器という客観性の象徴を撮りながら、写真自体もまた世界を新たに作り出す行為なのだと伝えたいです。

小林誠賞:「多重」 撮影者:キツネツキ さん(写真家) 

小林誠賞:「多重」       撮影者:キツネツキ さん(写真家)

作品概要
私にはこれらがどんな機能を有しているのか全く想像ができないけれど、これらがあることによってすごいことが起こっているんだということだけはわかります。 

奨励賞:「画面に収まらない、宇宙の謎」 撮影者:石川尊 さん(中学生)  

奨励賞:「画面に収まらない、宇宙の謎」 撮影者:石川尊 さん(中学生)

作品概要
地下11メートルのトンネルに入った瞬間、目の前に広がるパノラマでも収まりきらないほどの巨大な空間にまず驚きました。そして、この複雑な配管やケーブルの先にあるSuperKEKBとBelle II測定器によって、『物質と反物質はなぜ違うのか?』という宇宙の根源的な謎を解く鍵があることに、鳥肌が立ちました。 

審査員コメント

髙柳審査委員長: 
世代を超えて多くの作品が応募されたことを大変嬉しく思います。さまざまなバックグラウンドを持つ審査員の参加により、非常にバランスの取れた選考ができたと感じています。 
戦後80年が経ち、いまや世界各地に多様な加速器が存在しているという事実、そしてこのような国際的な写真コンテストが開催されているということ自体が、少なくともこの80年間、人類が知的好奇心を持ちながら平和を維持してきた証であると感じます。 

笠木委員: 
2位に選ばれた作品の挑戦的な視点が素晴らしく、この審査に参加できて本当によかったと感じるほど感銘を受けました。グローバル審査の結果も今から楽しみです。 

有馬委員: 
グローバル審査で評価され得る作品かどうかを基準に審査しました。構図が素直で、多くの人に受け入れられやすい色合いの作品が勝ち残ったという印象です。 

白井委員: 
1位の作品はオーソドックスで王道、2位の作品は変化球的な魅力があり、3位にはモノクロ作品が選ばれるなど、全体として非常にバランスの取れた結果になったと思います。個人的には、小林誠賞を受賞した作品が最も印象に残り、特に気に入っています。 

峠委員: 
加速器トンネル内はやや暗く、照明も蛍光灯(FL)なので、撮り辛かったことと思います。解決策としてモノクロ、絞り開けて一点集中、露光中ズームの試みが見られたことに敬意を表したいです。 

湯浅委員: 
120点の応募作品の中から選ばれた3作品はいずれも個性にあふれ、非常に魅力的でした。職業柄、加速器の写真は見慣れていますが、1位の作品はその「明るさ」が特に印象的でした。 

元村委員: 
「加速器」という、いわば一つの目的のために作られた装置を、撮る人の感性によってこれほど多様に切り取れるのかと、純粋に楽しませてもらいました。“加速器って、かっこいいよね”と感じてくれる人が一人でも増えたらいいなと思いながら、審査しました。 

足立委員: 
非常によい企画になったと感じています。KEKの広報担当理事として、参加してくださった皆さま、審査員の皆さまに感謝いたします。 

審査委員会: 

委員長 髙柳 雄一 多摩六都科学館館長 
委員笠木 絵津子 現代美術家、理学修士 
委員有馬 十三郎 東京家政大学 家政学部
造形表現学科 教授 
委員白井 良邦 Japan Times Sustainable Japan Magazine 編集長 
委員峠 暢一  元KEK広報担当理事 
委員湯浅 富久子KEK 共通基盤研究施設 名誉教授 
委員足立 伸一 KEK広報担当理事 
委員元村 有希子 KEK広報担当理事、
科学ジャーナリスト

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