2021年 年頭のご挨拶

 

皆さん、新年あけましておめでとうございます。

 

2021年、令和3年が皆さんとご家族、そしてKEKにとって実りの多い年になりますよう、心から願っています。昨年の新型コロナウィルス感染症の世界的蔓延で、世界が短期間のうちにずいぶん以前と異なるものになってしまいました。KEK職員の皆さんも不安な日々を送っておられることとお察しします。不安に加えて先行きが見えない状態が続き、私も、どうにも明るい気分になれない日々が続いています。そう遠くない時期にワクチンの効果が出始め、元の生活が戻ることを強く期待しつつ2021年、令和3年をスタートしたいと思います。

 

2021年の年頭にまず思い出していただきたいのは、KEKが創立され今年でちょうど50年になるということです。KEKの前身である高エネルギー物理学研究所は東大の付属研究所だった原子核研究所を母体として1971年に大学共同利用研究所の第一号として誕生し、以来50年にわたって大学の研究者とともに加速器を使った科学の発展を担ってきました。2004年度からは法人化され、そのあり方も大きく変化しました。

「大学共同利用」の理念はKEKの存在意義の根幹としてその歴史を貫いてきました。この理念のもと、大学とともに多くの分野の学術研究を担い、日本の研究レベルの向上・維持に貢献してきたことは大いに誇るべきだと考えます。この大学共同利用とは、加速器のような大学だけでは持つことができない大規模な研究施設を設置し、大学等の研究者の共同利用に供するというのがKEK発足当時の考え方です。その後、数多くの大学共同利用研ができ、そのあり様も時代と共に変化してきました。共同利用する対象も施設や設備だけでなく、貴重な資料であったり、研究を行う仕組みを共同で利用するようなものであったり、共同研究も共同利用の一形態であるという考え方もあるようです。このような変化の中で、KEKは粒子加速器の性能向上を図り、それによって大学の研究者と共に新しい科学を生み出すという道を一貫して歩み続けて来ました。時代の変化の中で半世紀にわたって色褪せることなく大学共同利用研としての役割を果たし続けることができたのは、このような仕組みが、真に学術研究にとって有用なものであり、研究成果を生み出すことに有効に機能するものだったからです。半世紀前に大学共同利用の理想を掲げてKEKを創立した大先輩の高い見識と努力にあらためて深い尊敬の念を禁じ得ません。

 

KEKにおいても50年の間には様々な変化が起こりましたが、その中で最も特筆すべき変化は国際化が大きく進んだことだと思います。外国人研究者のKEK滞在はつくばと東海を合わせて年間延べ3万人・日を越え、世界の加速器科学の研究拠点の一つとして広く認識される研究機関に発展しました。つまり、日本国内の大学共同利用研から国際共同利用研へと変貌を遂げてきたということです。日本の研究者が海外の研究に参加する場合のベースキャンプの役割も担っています。特に高エネルギー物理学の分野では世界中の研究者が優れた研究施設を求めてボーダーレスに移動し、広範囲の研究者による協力と競争のもとで研究成果をあげる研究モデルが成立しています。

KEKがこの世界ネットワークの一翼を担っていることが、多くの先輩方やすべての職員の皆さんの努力の成果であることは間違いありません。このことも大いに誇りを感じるべきであろうと思っています。昨年初頭からのコロナ禍のためにこのようなボーダーレス循環研究モデルが一時的に成り立ちにくくなっていることは残念ですが、関係する皆さんがこの状況でも研究を停滞させないために知恵を絞っていることに大変励まされます。この危機をチャンスに変えて、コロナ禍が終わった後でも有効に機能する新しい研究のモデルを確立すべく、さらに努力を重ねていただきたいと考えます。世界の他の研究機関も同じ悩みを抱えていますので、ぜひ協力の上、世界的な新しい研究スタイルを確立したいと願っています。

 

 

 

KEKは50年の長きにわたって大学共同利用の理念を掲げて大学の研究者とともに科学の発展に尽くしてきました。そこで、次の半世紀にわたってKEKが掲げるべき理想とは何なのでしょうか。大学共同利用の理念は少しも色褪せていないものの、研究の大型化と国際化の進行とともにそのあり方は大きく様変わりしています。研究機関に対する社会の要請も大きく変化しつつあります。日本の経済情勢も右肩上がりが当然という時代はとうに過ぎました。次の時代にKEKが高い存在意義を持ち続け、さらに大学とともに多くの分野の学術研究を担い、日本の研究レベルの向上・維持に貢献するためにはKEKはどう変わるべきなのでしょうか。半世紀の節目にあたって、今こそ大先輩諸氏から受け継いだ財産を超えた知恵が求められていると考えます。KEKがこれから歩んでいく道は決して平たんではなく、一本道でもありませんが、最も基本的なところで自然や物質の姿を明らかにしようとする基礎科学研究は人類の営みの中でも最も崇高なものであると信じています。KEKの職員全員がこの崇高な営みを進める、あるいは直接支援する役割を担っています。

どうか皆さん、それを誇りに感じていただいて、2021年が実りの多い年になるように共に歩んでいただくようお願いしたいと思います。私も理事の皆さんと共にそれを支えるべく最大限の努力を行って参ります。

 

令和3年1月12日

高エネルギー加速器研究機構長

山内正則