ミューオン稀過程研究

   

大強度ミューオンビームを用いて、標準模型では許されないミューオンの稀な崩壊を探ることにより、超対称大統一理論を実験的に検証することを目指しています。

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MEG実験装置

目的・ビジョン

ミューオンの崩壊において、フレーバーの保存を破るような崩壊モードが存在することが標準模型を超える物理から予想されています。本研究グループでは、1.ミューオンが電子とガンマ線に崩壊する事象(μ→eγ崩壊)、2.ミューオン原子中でミューオンが電子に転換する事象( μ-e転換 )の2つの事象を世界最高感度で探索し、その発見、分岐比の決定を目指して研究を進めています。これが実現すれば、素粒子の超高エネルギーでの振る舞いを理解する上で貴重な情報を手に入れることができます。

概要

ミューオン稀過程の研究には大強度ミューオンビームが不可欠です。1.のμ→eγ崩壊探索のためには、スイスポールシェラー研究所で提供される直流大強度ミューオンビームを用いた国際共同実験MEGが進行中です。ここでは1秒間におよそ3000万個のミューオンの崩壊を、液体キセノンガンマ線検出器と勾配磁場型陽電子スペクトロメータにより検出し、10兆分の1の実験感度の実現をめざして2009年から継続的なデータ収集が行われています。2.のμ-e転換事象の探索のためには、パルスミューオンビームが不可欠です。本研究グループではJ-PARCのパルス化陽子ビームを利用した国際共同実験(COMET実験およびDeeMe実験)のための準備を進めています。μ-e転換事象は終状態に特徴的なエネルギーをもった電子が1個現れるだけなので、パルス化されたビームの時間情報を手がかりに事象を選別します。このため、いかにきれいなパルスビームを形成するかが実験成功の鍵を握っています。COMET実験では1京分の1の実験感度を、DeeMe実験では百兆分の1の実験感度の実現をめざして、各国の研究者と共に開発研究を推進しています。

image002.pngCOMET実験装置概略図

補足説明

ミューオン:3世代ある素粒子のうち、第2世代に属する電荷を持ったレプトン。電子は第1世代に属するレプトンである。第3世代にはタウ粒子が属し、それぞれのレプトンに対応するニュートリノが存在する。

フレーバーの保存:素粒子の標準模型においては、反応の前後においてそれぞれの世代(フレーバー)に属するレプトンの数が変化しない(保存する)と考えられている。通常のミューオンの崩壊(ミッシェル崩壊 μ→eνν)においては終状態にニュートリノと反ニュートリノが現れるためフレーバーの保存が成立している。

関連するWebページ

MEG実験 http://meg.psi.ch
DeeMe実験 http://deeme.hep.sci.osaka-u.ac.jp/
COMET実験 http://comet.kek.jp/Welcome.html

関連する研究グループ

<span class="caps">MEG実験日本グループ http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/mori/
J-PARCハドロンビームライングループ http://www-ps.kek.jp/jhf-np/hadronbeam/index-ja.html
低温工学・超伝導研究 /old/ja/Research/IPNS/Cryogenics/
計測システム開発研究 /old/ja/Research/IPNS/ElectronicsSystems/
ミューオン精密測定研究 /old/ja/Research/IPNS/g-2RandD/

関連する研究施設

スイスポールシェラー研究所 http://www.psi.ch
J-PARC http://j-parc.jp
J-PARC 原子核素粒子実験施設 http://j-parc.jp/NuclPart/index.html
J-PARC 物質・生命科学実験施設 http://j-parc.jp/MatLife/old/ja/index.html

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