物構研談話会(16-01)
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開始 | 2016/04/27(水)16:00 |
終了 | 2016/04/27(水)17:00 |
会場 | 4号館2階輪講室1 |
講演タイトル | 重い電子系化合物URu2Si2およびUAu2Si2における5f電子低温秩序状態の研究 |
講演者 | 田端千紘 氏 (KEK物質構造科学研究所) |
言語 | 日本語/Japanese |
連絡先 | naomi.nagata@kek.jp |
ウェブサイト | |
食堂・売店 | 利用予定なし/0 |
概要
強相関f電子系は、多様な磁気秩序状態、重い電子(の超伝導)、磁性と超伝導の共存、多極子の相関・秩序などの、非常に多彩な興味深い現象の舞台として注目を集めてきた。これらの現象は基本的には、どちらも伝導電子とf電子間の混成効果に端を発する効果である、近藤効果とRKKY相互作用の競合の枠組みである程度は理解されてきた。しかし、異方的超伝導の対形成のメカニズムや、f電子が1イオンあたり複数個存在する系での重い電子形成のメカニズム、長年にわたって秩序変数が未解明な秩序状態など、未だ解明すべき課題が残されている。これらの課題にアプローチするためには、個々の物質についてその物性をより注意深く正確に詳らかにしていくことが重要であると思われる。本研究では、その対象物質として重い電子系化合物の同型物質UAu2Si2とURu2Si2を選んだ。 UAu2Si2は過去にあまり詳しく調べられていない系で、単結晶の報告が無い上に多結晶試料についての報告も5件ほどしか無く、その基底状態は不明瞭なままであった。本研究では、この物質の単結晶試料の作成に初めて成功し、磁気異方性を含めた基礎物性を明らかにした。本研究の結果、他のいくつかの5f電子系化合物で見られるような局在的な磁気モーメントによる秩序と重い電子が共存している状態が、この物質でも実現していることが分かった。さらに、29Si-NMR実験から、約20 Kで起こる磁気秩序の磁気構造の候補の考察を行い、q = (2/3, 0, 0)のスピン非補償の反強磁性を提案した。この構造は次に述べるURu2Si2の高磁場相のそれと同じである。 URu2Si2は17.5 Kで未知の秩序相、いわゆる「隠れた秩序」相への相転移を起こすことで30年近くにわたって注目され続けてきた物質である。この秩序変数を特定すべく、これまでに多くの理論・実験両面からの研究が行われてきたが、時間反転対称性や並進対称性の破れの証拠は見つかっていない。本研究では結晶対称性の低下の有無を高精度に検証するため、放射光X線を用いた高分解能X線回折実験を行った。実験の結果、同型の結晶構造をもつ鉄系超伝導体で見られるような正方晶‐斜方晶歪みは、この物質においては格子定数の変化率で1×10^-6の精度で起こっていないことが明らかになった。 まとめると、Auの系については基底状態がほぼ明らかになった一方、Ruの系はまだ「隠れた」ままである。しかし本研究からは、両者が共通の磁気秩序相を持っているという興味深い可能性が指摘された。今後の課題として、この構造が実現するメカニズム解明に興味が持たれる。
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