超伝導加速空洞試験施設(STF)

国際リニアコライダー(ILC)等の次世代の加速器実現に向けて重要な役割を担う、高性能の超伝導空洞開発と、超伝導加速システムの試験開発を行っています。

 

目的・ビジョン

超伝導RF試験施設(Superconducting RF Test Facility : STF)では、2005年〜2008年をSTFフェーズ1、2009年〜2013年をフェーズ2と位置づけ、超伝導加速技術とシステムの試験開発を行っています。

 

概要

フェーズ1では、基盤研究設備の立ち上げ、ILC向け超伝導加速空洞の開発と試作、そしてこれらを納めた横置きクライオスタット(クライオモジュール)を絶対温度2度に冷却した時のパルスRF による動作試験を実施しました。

 

2008年10月から約2年半にわたり「S-1グローバル」と呼ばれる国際協力のシステム実証試験がSTFで実施されました。 「S1」とは、ILCの技術開発計画の中の「クライオモジュール試験の第一段階」を指しています。 この試験のために、世界の研究所から高い性能が確認された合計8台の超伝導加速空洞が集められました。

 

イタリア国立核物理学研究所(INFN)から到着したクライオスタットにはアメリカとドイツから送られた加速空洞各2台を、KEK製のクライオスタットには日本製の空洞4台を組込んで2台のクライオスタットを連結。 同時に運転して、ILCの加速勾配※設計値である1メートル当たり31.5メガ電子ボルト(31.5MV/m)以上での運転をデモンストレーションすることを目的とした試験で、クライストロン(加速空洞にマイクロ波を送り込む装置)1台を使って8台のうち7台の加速空洞の同時運転に成功しました(1空洞は故障により離調)。 また、平均加速電界として26MV/mでの安定な高電界運転を達成しました。 クライオモジュールを構成する各種機器が十分に機能して動作していることが実証されたことになります。

 

STFフェーズ2ではILC 線形加速器のプロトタイプを建設し、ビームを使った運転試験を行う予定です。 並行して、大規模加速器で必要となる、超伝導加速空洞などの生産技術の工業化を本格化する計画です。

 

補足説明

「超伝導加速」は、ニオブ等の超伝導材料で作った加速空洞を極低温まで冷却し、超伝導状態にして粒子ビームを加速する方式のことです。 次世代加速器の加速方式として、世界で研究開発が進められています。

超伝導加速の最大の特徴は、その加速効率の高さです。 超伝導材料でつくられた空洞にマイクロ波を送り込んで電場をつくり、電子や陽電子のビームを 加速します。 -271度Cまで冷却されたニオブ製の空洞の内表面は超伝導状態になり、電気抵抗が生じません。 そのため、電力損失や加熱が起こらず、空洞の 中にマイクロ波のエネルギーを、きわめて効率よく溜め込むことができるのです。

小さな電力で高電界を発生することができるので、短い距離で大きなエネルギーを粒子に与えることができます。 つまり、同じエネルギーを実現するための加速器の長さを抑えることが出来るので、これは加速器の小型化につながります。 また、空洞の発熱を抑えることができるため、過熱対策用の冷凍機コストを抑えることも可能になります。

加速器の技術は現在、ガンの診断や治療などの医療分野や、素材の改良、精密加工などの工業分野など多岐にわたって活用されています。 超伝導技術で加速器が小型化されれば、よりコンパクトで省エネルギー、かつ安価な装置を実現でき、様々な応用分野でより広い選択肢と機会を提供することができるようになります。

 

※1 クライオスタット

電子/陽電子ビームを「超伝導加速」するためのシステムで、超伝導体である「ニオブ」製の空洞を、絶対零度(273℃)に近い極低温まで冷やして超伝導状態にし、そこに高周波電力を入力して交番加速電界を発生させ、ビームを光速近くまで加速します。 超伝導状態では、電気抵抗がほぼゼロになるため、非常に効率よく高周波電圧をかけ、加速できるのが特徴。

 

※2 国際リニアコライダー

アジア、北米、欧州の3地域で協力して推進している次世代電子・陽電子衝突型加速器。ビッグバン直後の状態を再現することで、宇宙創成の謎を解き明かすことが目的。 また、研究開発から生まれる様々な先端技術の波及効果にも大きな期待がかかっています。

 

※3 加速勾配

粒子の「加速」とは、スピードの増加とエネルギーの増加、双方を意味します。 加速器が一定の距離で粒子のエネルギーをどれだけ増加させられるかを「加速勾配」と呼び、加速勾配が高ければ高いほど、直線型加速器の長さを短くすることができます。

 

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