環境に優しい高効率冷却システムを実現する新酸化物エネルギー材料の発見 -巨大圧力熱量効果による熱制御の実証-

京都大学
高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンタ-

概要

京都大学化学研究所の小杉佳久 博士課程学生、後藤真人 助教、譚振宏 博士課程学生、菅大介 准教授、島川祐一 教授の研究グループと産業技術総合研究所 磁性粉末冶金研究センター エントロピクス材料チームの藤田麻哉 研究チーム長、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の齊藤高志 特任准教授、神山崇 教授は國立台灣大學および台湾NSRRCの研究チームと共同で、Aサイト秩序型ペロブスカイト構造鉄酸化物NdCu3Fe4O12が巨大な圧力熱量効果を示し、高効率な熱制御が可能なことを実証しました。

現在、世界の電力消費の25~30%が冷却に使われていると言われるほど、熱に関する問題がさまざまな形で顕在化してきています。熱量効果を利用すると高効率な冷却などの熱制御を実現できるので、熱問題の解決に繋がります。しかしながら、実用に供されている熱量効果材料はほとんどなく、大きな熱量効果を示す固体材料の開発が求められていました。本研究では、NdCu3Fe4O12が、室温付近でのサイト間電荷移動1次相転移に起因する磁気エントロピーの変化により、巨大な潜熱が生じることを見出しました。NdCu3Fe4O12では、圧力を加えることでこの巨大な潜熱のほぼ全てを効率的に蓄熱/放熱して利用できます。実験では、圧力熱量効果により5.1 kbar(510 MPa)の圧力を加えることで約13.7 ℃の大きな断熱温度変化を達成できることが見積もられました。このような材料を使うことで、環境に優しい高効率な新しい冷却システムを構築することが可能となります。

本成果は、3⽉24 ⽇に国際学術誌Advanced Functional Materials にオンライン掲載されました。

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