【KEKのひと #42】「自分で考え、創り上げて、結果を出す」ミューオングループ 学生たちの挑戦

   
素粒子ミューオンを加速器で生成し、精密測定する実験グループは、昨年10月に世界で初めて負ミューオニウムの加速に成功。その実験を下支える、若き精鋭たちにインタビューしました。

ミューオングループを支える若き精鋭たち。左から、安田さん、北村さん、中沢さん、四塚さん

まずはお一人ずつ、簡単に所属とお名前、実験のどの部分を担当されているのか聞かせてください。(文中敬称略)

四塚麻衣(以下、四)「名古屋大学理学部の4年です。ミューオン検出器の性能評価を担当しています」

中沢雄河(以下、中)「茨城大学理工学研究科の修士1年です。ミューオンを冷却した後に、高周波加速器に入れる入射器系及び加速ミューオン診断系の調整を担当しています」

北村遼(以下、北)「今年9月までは東京大学大学院に所属し、修士から博士にかけて、ミューオンの冷却装置を作り、ミューオン高周波加速実証までを行いました。10月からは日本原子力研究開発機構の博士研究員としてJ-PARCリニアックグループに所属しています」

安田浩昌(以下、安)「東京大学の理学系研究科博士課程1年です。ミューオンのスピンを反転させる装置を開発しています。本当はもう一人、きょうは来られなかったのですが、名古屋大学理学研究科の修士2年の須江くんという人がいます」

数ある物理実験の中で、なぜこの実験グループに?

四「この実験は大学の研究室内でも取り組んでいる人が少なく、装置も開発途中ということを聞いて、自分も関わりたいと思い参加しました」

中「おもしろそう、と好奇心で飛び込んでみました」

安「学部のころ、KEKのサマーチャレンジなど実験スクールに参加して、実験がやりたい、と思っていました。修士ではミューオン実験における検出器に関する開発をしていたのですが、 ミューオン加速は博士から参加しています」

北「学部4年生の時にこの実験の発案者の一人で現・J-PARCセンター長の齊藤直人教授に『この実験をやれば、世界でも重要な位置づけとなる実験に参加できる』と誘われ、迷った末に参加しました。まったくゼロからのスタートで、装置開発も学生の自分がひとりでやる作業も多かったです。そこから、ミューオン加速成功にこぎつけ、それを博士論文とすることができました」

この実験をしていて、やりがいやおもしろさを感じるのはどういった時ですか?

四「30~40ピコ秒(ピコ秒=1兆分の1秒)の時間分解能を目標にしている精密な機械で、ノイズの原因などを探して動作確認をします。先ほどお名前が出た大学の先輩・須江さんと行っているのですが、大学で作って試験したものを、こちらに運んできて実験装置につなげて、実際にちゃんと動いたときはやはりうれしいです」

中「加速器を使って実験するのは、ほかの環境ではできないので、『ここでしかできないこと』をやっていると思うと、貴重だなと思います。去年を同じ装置で実験していて、今年は理解できる部分が増えていると、成長したなと思えます。それもおもしろいと思える瞬間の一つですね」

北「ミューオンの加速に成功したときは、達成感というよりは、責任・役割を果たせた安堵感が大きかったですね。装置を考案して、組み立てて、データを取って解釈するまで、一つ一つを積み重ね、各段階で順調にいくと安堵感が得られます。そういうのは性に合っているかなと」

安「いろいろな人にアドバイスをもらいつつ、全部自分でできるのは、責任も伴いますがおもしろいです。自分で作った装置が、ゆくゆくこの実験で重要な要素になると考えると、やりがいがあります」

研究以外の時間は何をしていますか?

北「四六時中、研究のことばかり考えていますね。シャワーを浴びている時なんかも、『あ、こうしたらいいのかも』というアイディアが頭に浮かんで、次の日実践する、というような感じです」

四「友達と小説を書いて、冊子を作っています。小学生くらいの時から小説を書くのが好きで。研究で煮詰まると、小説を書いて発散したりします。本格的なものでなく、くだらない内容だと自分では思うのですが(笑)」

安「物理の違う分野の研究者や学生と一緒に、那珂湊の魚市場に行ったり、スパリゾートハワイアンズに行ったりします。専門が違うので、物理の話が気さくにできて、あ、やっぱり物理って楽しいなと思える時間です」

中「一人旅が趣味で、学部生時代はアイスランドやモロッコなどを旅しました。モロッコでは、迷宮都市フェズで迷ってしまい、日が暮れてもホテルにたどり着けなくて、現地の子どもたちに助けてもらった経験もあります。最近は行けていないですが、旅の計画をするのも楽しいです」

それぞれもっとお話を聞きたいですが、今日はこのあたりで。どうもありがとうございました。

(聞き手 広報室・牧野佐千子)

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