放射光の特性を活かした手法で今まで見えなかった組織・病巣を捉える
分離型干渉計を用いた位相コントラストX線CTシステム (BL-14C)
病院で使われているX線撮影は、組織によってX線の吸収の度合いが違うことを利用しています。生体組織はX線の吸収によるコントラストがつけにくいので、X線の吸収の大きな造影剤(硫酸バリウムなど)が利用されています。これに対して、放射光の特徴を利用した新しい原理に基づくさまざまな画像診断法が開発されています。単色X線を利用した心臓診断システムや、X線の波としての性質を利用した位相コントラスト法、放射光が並行光であることを利用したX 線暗視野法など、これまでに見えなかった組織や病変を捉える挑戦が行われています。
位相コントラスト法は、X線干渉計という装置によって試料によるX線の位相のずれをコントラストとして見る方法で、生体元素のような軽元素では吸収コントラスト法に比べ数百倍以上高感度です。この方法を開発したBL-14Cは、垂直ウィグラーという挿入光源から発生する放射光を用いたビームラインです。通常の放射光は横長で波の振動方向は水平方向にそろっている(水平偏光)のに対し、垂直ウィグラーから発生するX線は縦長で垂直偏光した光です。そのため、干渉計全体を水平面上に配置することができ、重力の影響がなく十分な精度が出せます。また、生体のような大型試料を観察できるように、試料部分を独立させた分離型干渉計も開発されています。この手法は生体試料だけでなく、最近では各種産業材料の分析にも有用であることが証明されつつあります。
ビームライン
BL-14B, BL-14C, AR-NE7A