ニュートリノ実験用超伝導ビームラインシステム
完成した超伝導電磁石システム
概要
J-PARCでは、ニュートリノ振動実験(T2K)が2009年春から開始されています。その一次ビームラインには、主リングから射出される最高50 GeV(現状30GeV)の陽子ビームを半径約100 mで90 度程度曲げる事が要求されました。これを達成するため、2.6 Tの高磁場を発生する超伝導磁石システムが開発されました。このシステムの開発はKEK素粒子原子核研究所から依頼を受けて、超伝導・低温工学センター、機械工学センター、そして素粒子原子核研究所低温グループが共同で行いました。2002年から開発が始まり、全システムは2008年12月に完成しました。その後2009年6月までビーム運転を含む試運転を行い、4月23日には始めてのニュートリノ生成を確認しています。
限られた予算とスケジュールで開発および建設を実現するため、ビームラインの主構成要素となる超伝導磁石には複合磁場型超伝導磁石が採用されています。これは2.6 Tの2極磁場と19 T/mの4 極磁場を同時に発生できる磁石になっており、実際の加速器としては世界で始めて採用されています。全28台の磁石は直列に接続されており、超臨界ヘリウムにより約4.5Kに冷却されます。超臨界ヘリウムは、地上に設置した1.2 kWの冷凍パワーを持つ冷凍機システムにより供給されます。
補足説明
2極磁場:ビームを曲げるための磁場。
4極磁場:ビームを収束するための磁場
関連するWebページ
http://www-nu.kek.jp/jhfnu/index.html
http://www-sk.icrr.u-tokyo.ac.jp/sk/physics/t2k.html
http://cry3-aps2.kek.jp/~cryoweb/index.htm
関連する研究グループ
KEK素粒子原子核研究所
KEK超伝導・低温工学センター
KEK機械工学センター
神岡宇宙素粒子研究施設