ICFA 250GeVのILC加速器建設を支持しILC早期実現を奨励

2017年11月10日 トピックス

「国際将来加速器委員会(ICFA)」は、いわゆる「ヒッグス・ファクトリー」として250ギガ電子ボルト(GeV)で運用する国際リニアコライダー(ILC)の建設を支持する声明を発表しました。 声明の中でICFAは、ILC計画を継続的に支持するとともに、ILCを日本のイニシアチブによる国際プロジェクトとして、時宜を得て実現をすることを強く奨励しました。

この声明は、カナダ・オタワで11月6日から9日に開催された第12回ICFAセミナーの場で発表されたものです。

ICFA現委員長である、ヨアキム・ムニック ドイツ電子シンクロトロン研究所 素粒子物理・宇宙素粒子物理部長は、「世界の主要な素粒子物理学研究者の意見が、このように一致したことは非常に喜ばしいことです。素粒子物理学はヒッグス粒子の発見のような、世界の注目を集める目覚しい成果を上げてきました。次のステップは、より強力な加速器を用いて根源的な謎をより深く解明するためのさらに国際的な取り組みとなります。世界の科学者はこの心躍る未来に向け一致団結して取り組んでいきます」と述べています。

声明文全文(2017年11月8日)

ILCの「ヒッグス・ファクトリー」としての250ギガ電子ボルト運転に関する国際将来加速器委員会(ICFA)の声明

欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)で2012年にヒッグス粒子が発見されたことは、近年の科学における最も重要なブレークスルーの1つであり、基礎物理学の大きな一歩と成りました。ヒッグス粒子を精密に研究することにより、物質とその相互作用の最も基本的な法則の理解がさらに深まるでしょう。

250ギガ電子ボルト(GeV)の重心系エネルギーで運用する国際リニアコライダー(ILC)は、ヒッグス粒子の精密測定により素晴らしい科学成果をもたらすでしょう。したがって、国際将来加速器委員会(ICFA)は、ILCを、LHCとそのアップグレード計画とは相補的な役割を果たす重要な科学プロジェクトと認識しています。

ICFAは、ILCのコスト削減に関するリニアコライダーコラボレーションの取り組みを歓迎しています。 これは、250 GeV加速器が、2013に発行した技術設計報告書(500 GeVの加速器)に比べて最大40%のコスト削減が可能であることを示しています。

ICFAは特に、リニアコライダーの高エネルギーへの拡張性を重視しており、250GeVを超えるエネルギー領域で行うことが可能となる追加の測定で、大きな発見の可能性があることに注目しています。

ICFAは、今回の委員会で示された、リニアコライダー計画推進委員会(LCB)の報告書の結論を支持しており、日本が、日本のイニシアチブによる国際プロジェクト1として、重心系エネルギー250GeVの「ヒッグス・ファクトリー」のILCを、時宜を得て実現することを強く奨励します。

脚注[1] LCB報告書では、国際的なプロジェクトの最近の例として、欧州のXFELとFAIRが挙げられている。

オタワ、2017年11月


ICFAとは

国際将来加速器委員会(ICFA:International Committee for Future Accelerators)は高エネルギー物理研究に用いる加速器の建設と運用における国際協力の促進を目的に設立された組織。 高エネルギー物理研究に関与する地域の専門家から構成されており、現在の委員は16名。

ILCとは

国際リニアコライダー(ILC)は、49の国と地域の300以上の大学や研究所の科学者やエンジニア2,400人以上が参加する国際的な取り組みです。

対面する2つの線形加速器で構成されているILCは、電子とその反粒子である陽電子を加速して衝突させます。 絶対零度に近い温度で運用される超伝導加速器空洞は、加速器の中心にある検出器の中で衝突するまで、加速して粒子にエネルギーを与えます。 本格運用時には、電子と陽電子のビームが1秒間に約7,000回、250ギガ電子ボルト(GeV)の重心系衝突エネルギーで衝突し、大量の新たな粒子が生成されます。 それらの粒子はILCの測定器で捉えられ記録されます。

それぞれのビームには、人間の髪の毛よりもはるかに小さい領域に200億の電子または陽電子が集中しています。 このことにより、粒子の衝突頻度は非常に高くなります。 この高い「ルミノシティ」と、衝突する粒子から起こる非常に正確な相互作用により、ILCは、欧州合同原子核研究機関(CERN)の大型ハドロンコライダー(LHC)で最近発見された、ヒッグス粒子などの性質を詳細に測定するための豊富なデータを取得することができます。 また、暗黒物質のような物理学の新しい領域にも光を当てることができます。

ILCは当初重心系エネルギー500ギガ電子ボルトの加速器として設計されていました。 この新たな設計は、加速器の建設コストの削減と、それによるILC早期実現に資するものです。

世界各地で行われているILCの加速器及び測定器に関する研究開発活動と計画推進の活動は、リニアコライダーコラボレーション(LCC)が中心となって進めています。 LCCのディレクターは、前LHCプロジェクトマネジャーのリン・エバンス氏が務めています。 LCCの活動は、ICFAの下部組織であるリニアコライダー国際推進委員会(LCB: Linear Collider Board)によって監督されています。 現在LCBは中田達也氏(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)が議長を務めています。 (ウェブページ:International Linear Collider

連絡先

  • ILCコミュニケーター(communicators@linearcollider.org):
    • Perrine Royole-Degieux, CNRS/IN2P3研究所, フランス +33 4 73 40 54 59, royole@in2p3.fr
    • 高橋 理佳, KEK, 日本, +81 29 879 6291, rika.takahashi@kek.jp
    • Barbara Warmbein, DESY研究所, ドイツ, +49 40 8998 1847, barbara.warmbein@desy.de
  • KEK広報室, KEK, press@kek.jp