2017年10月03日

2017年のノーベル物理学賞は重力波観測の米国LIGOチームが受賞

これまでに検出されたブラックホール合体とその質量:LIGO/Caltech/Sonoma State (Aurore Simonnet)

2017年のノーベル物理学賞は、重力波を初観測した米国 advanced LIGO(アドバンスト ライゴ)チームのマサチューセッツ工科大学のレイナー・ワイス名誉教授、カリフォルニア工科大学のバリー・バリッシュ名誉教授、カリフォルニア工科大学のキップ・ソーン名誉教授の3氏が受賞しました。 重力波検出に成功したとの発表(2016年2月)からわずか2年でのスピード受賞となりました。

重力波はアインシュタインが1915年に一般相対性理論からその存在を予言していましたが、その効果があまりに小さいため、アインシュタイン自身が実験的な検出は無理だろうと考えていたようです。 実験的な重力波の探査は1960年代に米国メリーランド大のウェーバー教授によって開拓されました。 彼の実験で見つかった重力波イベントは、現在では真のイベントであったと認められていません。 しかし、ウェーバー教授の先駆的な研究が引き金となって世界各地で重力波検出の実験的研究が立ち上がりました。

KEKでも、東大との共同研究で1980年代から1990年代にかけてカニパルサー(PSRJ0530-22)からの連続重力波の探索を行い、重力波振幅の上限値を得ています。 ウェーバーが開発した重力波の検出装置は金属製の振動子を用いた共振型とよばれるタイプのものでした。 1990年代後半に入るとレーザー技術の進歩に伴い、重力波検出器の主流は共振型から長い腕をもつレーザー干渉計型へと移っていきました。

米国のLIGO(Laser Interferometer Gravitational wave Observatory)計画は、この頃にスタートを切ったパイオニア的な検出器です。 米国ルイジアナ州リビングストンとワシントン州ハンフォードにそれぞれ腕の長さが4kmの大型レーザー干渉計を建設し、天体起源の重力波検出を目指すものです。 同じ性能の2台の検出器を離れた場所に置き、地面の振動などの外来振動を偽重力波信号として検出しないように工夫しています。 2002年から運転を開始したLIGOは、検出器の調整を行いつつ何度かの観測を実施、その後2009年から2014年にかけては本格的な性能向上のための改造を実施しました。

そして、本格観測を始める直前の2015年9月14日、ついに、13億光年彼方で起こった太陽質量の36倍と29倍の2つのブラックホールが合体した瞬間を重力波信号で検出したのです。 その後もブラックホール合体からの重力波検出が続き、つい先月の2017年8月にはヨーロッパのadvanced VIRGO検出器でも、advanced LIGOと同時に重力波信号を検出することに成功しました。 現在までに合計4つのブラックホール連星の合体イベントが検出されています。 太陽質量の10倍を越えるような重いブラックホールの合体が次々と発見されていることは、大きな驚きと共に宇宙の謎をさらに深めています。

アインシュタインの予言から100年。 重力波は闇雲に探査する時代から、宇宙を探る手段として活用する時代に突入しました。 ブラックホールの合体イベントは今のところ光による観測などでは検出できておらず、重力波だから見る事が出来た現象と考えられています。 このように、重力波は宇宙を探る新しい目となりうるのです。

日本でも、東大宇宙線研、KEK、国立天文台の協力の下、岐阜県飛騨市神岡町の地下に新しい重力波検出器KAGRAの建設を急ピッチで進めています。 2010年から建設をスタートし、2019年春には建設を終える予定です。 KAGRAでは、LIGOやVIRGOにはない新しい技術「極低温鏡」を採用しており、最先端の技術で重力波検出を目指しています。 この他、インドでも4km基線長のLIGOと同型検出器の建設が決まっています。 これらの大型重力波検出器は最終的に国際観測ネットワークを構築し、宇宙のどの方向から重力波が来ても瞬時に分かるようになります。

これからも、まだまだ重力波で宇宙の謎が明らかになっていくと期待されています。 今後も重力波から目が離せません。

【執筆:都丸隆行(KEK共通基盤施設 超伝導低温工学センター 准教授)】