【KEKのひと】Belle II測定器開発こぼれ話

2017年4月27日

先日、これまで別々に開発してきた測定器を加速器に組み込む「ロールイン作業」という大きな局面を迎えたSuperKEKBプロジェクト。その測定器側のBelle Ⅱ実験は、KEKがホスト機関として進めており、国内外からも多くの大学・研究機関が参加しています。

Belle II測定器の中にある7つの検出器のうち、前身のBelle測定器にはなく、今回のグレードアップに欠かせないTOP(トップ)カウンター。その開発に携わる名古屋大学の飯嶋徹教授と同大学居波賢二准教授のお二人にインタビューしました。

―お二人はTOPカウンターの開発に携わられているということですが。
飯嶋氏(以下、飯)「Belle Ⅱ測定器では、SuperKEKBで生み出した素粒子の運動量やエネルギーなどを測定、記録するのですが、そのうち素粒子の種類を測定する検出器です」

―飯嶋さんがこの分野に進もうと思われたのはなぜでしょう。
飯「大学院のころから合わせると30年携わっています。中学時代は、DNAなど分子レベルの現象を人間が理解できるということへの驚きから、生物の分野に興味を持っていました。物理にはあまり面白みを感じていなかったですね」

―物理への興味はどのようなきっかけで。
飯「高校のころ、例えばボールを投げた時に描く軌道と天体の動きが同じ法則で説明がつくということを知って、一つの式でいろいろな現象が説明できる、物理の世界はすごいんだな、と分かったわけです。また、大学に入ったばかりのころ、CERN(欧州合同原子核研究機構)で新しい素粒子の発見があり、大きな装置を作って理論的に存在が予想されている粒子を実際に見つけたことに、とても感銘を受けました」

―居波さんはどのようなきっかけでしたか。
居「もともと数学に興味があったのですが、高校時代にアインシュタインの特殊相対性理論を扱ったTV番組を見て、物理の世界にも興味を持ちました。大学では、現象の根本的なことが知りたいと考えて、物理を選択しました。また、棚を作るなど、今でいうDIYのような手作業も好きだったので、頭で考えるだけよりは実験をしたほうが根本的なことを調べられると考えました」

―大学時代、これはおもしろかった、という実験はありますか。
居「学生の実験はだいたい決まったことをやるのですが、天体観測の衛星追尾システムを教授と1か月かけて作り上げるなど、自分で考えながら新しいシステムを一から作り上げるのがおもしろかったですね」
飯「高校の時などは湯川秀樹先生などに憧れて、研究といえば紙と鉛筆で、机の上で、というのを想像していました。学年が進むにつれていろんな人と共同でひとつのことをやっていく実験の世界が向いているなと思いました。頭も重要だけど、手足を動かして、口も耳も全部使ってやらないといけない。行動力が重要ですね」

―お二人は普段同じ研究室で研究をされているのですか。
飯「そうです。同じ研究室内に、Belle Ⅱ実験に携わっているのは院生も含めて10人くらい。週2回ほどミーティングをして、議論しながら、意思疎通しながら進めるのがとても大事です」

―メンバーで意見が分かれることは。
飯「TOPカウンターの開発では、アメリカやイタリア、スロベニアのチームも参加していて特に彼らが一緒になると意見は分かれます。『接着剤はこれがいい』『いやあれがいい』とか(笑) そのような対立が起こった時に、なぜ自分はそっちがいいと思うか証明しようとするのが研究者のいいところです。そうして最終的に一致していく。その繰り返しですね」
居「現場では時間との戦いもあるので、完全に納得はできないけど‥ということもありますけど(笑)」

―やりがいやおもしろさはどのようなところに感じられますか。
飯「素粒子同士の衝突といった目には見えないことや、ビッグバンの直後に宇宙で起こっていたことを、実験で確かめることができること。さらに予想してそれをきちんと確かめられるというのは、おもしろいし、すごいことだなと思います。それをやるための実験は、並大抵の技術ではない、高度なテクニックの集合体なわけです。それを達成したとき、そんなことを人間ができるのかと、人間も捨てたものではないなと、驚嘆します」

―予想通りのものを測定できた時は、皆さんでお祝いをするのですか。
居「巨大なシャンパンを開けて祝ったりしましたね」
飯「本当は予想通りというよりは、新しいものの発見のほうがうれしいですけどね」

―SuperKEKBプロジェクトではそれがあるかもしれませんね。
飯「そうですね。それを狙っています」
居「私の場合も同じで、予想通りの結果を出すことは達成感があり、その積み重ねですね。さらに新しいものが見つかるかもしれないと、期待しながらやっていきます」
飯「測定器などは、どこかで買えるものならすでに誰かがやっているもの、ということですからね。革新的なものを自分たちで作ることがおもしろい。毎回『一点もの』を作り上げます。日本にKEKのようなところがあるのは幸運で、恵まれた環境にあると思います。大型の実験で、多くの外国からの研究者が来て、日本がリードして一緒にやっているところは、ほかの分野ではないと思います」

―貴重なお話をありがとうございました。


(聞き手 広報室 牧野佐千子)

◆「KEKのひと」は、研究者、ユーザー、技術者、事務系職員など、KEKに関わる人たちにインタビューし、その分野に興味を持ったきっかけや日々の生活のことなど、一般記事などでは伝えられない素顔に迫る企画連載です。

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