2012年06月20日

Lyn Evans氏、リニアコライダー新組織のディレクターに

2012年6月20日

(将来加速器委員会プレスリリース 日本語仮訳)

次世代の大型粒子加速器の国際共同研究グループが、新たなリーダーを迎えることになった。将来加速器国際委員会(ICFA: International Committee for Future Accelerators)は6月20日、欧州合同原子核研究機関(CERN)のLyn Evans氏を、直線型衝突加速器(リニアコライダー)研究を推進する新組織の初代ディレクターに任命すると発表した。現在、世界では、リニアコライダー 実現に向け、二つの計画が推進されているが、Evans氏はこれらを一つの組織の元で率いることになる。Evans氏は、CERNを拠点に活動を行う。

過去数年にわたり、素粒子物理研究推進のための新たな加速器にむけ、国際リニアコライダー(ILC)とコンパクト・リニアコライダー(CLIC)の2つのリ ニアコライダー研究が推進されてきた。Evans氏は、これらの研究開発を一体にまとめる任に当たるとともに、素粒子物理コミュニティや管轄官庁に対して この活動を代表する。

今回の任命にあたりICFA議長のPier Oddone氏は「この新組織の舵取り役としてEvans氏を迎えるのは、素粒子物理コミュニティにとって喜ばしいことです。CERNの大型ハドロンコラ イダー(LHC)は、短い運転期間にもかかわらず、所期以上の性能を実現しています。このLHCの建設を指揮したEvans氏の経験は、新組織にとっても 貴重なものとなるでしょう」と述べている。

次世代のリニアコライダーは、電子と陽電子を衝突させる加速器である。リニアコライダーでの精密測定により、LHCで期待される発見をより精査し、物質世界の根源的な謎に迫ることが可能となる。

国際リニアコライダー(ILC)は、0.5~1テラ電子ボルトの重心エネルギーで粒子を衝突させる加速器で、超伝導加速空洞を用いたビーム加速方式を採用し ている。ILCプログラムは、世界各国の研究所によって構成される「国際共同設計チーム(GDE: Global Design Effort)」が率いてきた。GDEは来年、技術設計報告書(TDR: Technical Design Report)をICFAに提出する予定である。この報告書の提出は、技術設計の観点からはILC加速器の建設準備が整ったことを意味するものだ。

CLIC は、常伝導加速管を使い、2ビーム・システムと呼ばれる加速方式を採用した加速器で、0.5~3テラ電子ボルトの重心エネルギーで粒子を衝突させることが できる。CLICの開発は、CERNのイニシアチブのもと、多数国の研究所が参加する国際協力で推進されている。CLICは現在、概念設計の段階にある。

この数年、ILCとCLICは、両計画に共通する技術的課題における研究協力に取組み始めている。今後は、新しいリーダーシップの元でILC、CLIC両方の研究開発の方向性が示されることになる。

「LHC からの新物理の結果報告を目前に控え、リニアコライダー研究が次のステップに進むべき時が訪れています。この新組織の仕事は、LHCの結果を踏まえ、次世 代リニアコライダーの建設提案に向けた準備作業を円滑に進めることです」と、国際リニアコライダー運営委員会(ILCSC)の議長であるJon Baggerジョンズ・ホプキンス大学教授は述べている。

Evans氏は、技術開発やプログラムのマネジメントにおいて幅広い経験を有しており、直近ではLHC加速器建設を指導した。Evans氏は、ILC、CLIC、測定器の各研究を担当する3名のアソシエイト・ディレクターとともに新組織の運営にあたる。

「リニアコライダー開発を進めるための新組織の在り方は、素粒子物理研究の国際性を顕著に示しています。今後のエネルギー・フロンティア研究が、計画当初より 国際プロジェクトとして執行されなければならないことは明白であり、これはその途上における重要なステップだといえるでしょう」と、CERN所長の Rolf Heuer氏は述べている。

今回の新組織ディレクターの任命は、米・欧・アジアの素粒子物理研究者からの候補者推薦を受け、 ICFAでの審議を経て決定されたものである。来月オーストラリア、メルボルンで開催される高エネルギー物理学国際会議(ICHEP2012)で、 Evans氏はICFAの委員と会合を行い、3名のアソシエイト・ディレクターを任命する予定だ。

前ICFA議長の鈴木厚人KEK機構長は 「Evans氏の主導のもと、信頼性、実現性ともに優れた将来加速器の建設提案がまとまることを期待します。また、ILCの技術設計完成に向けた、国際共 同設計チームと物理測定器国際組織の努力に感謝の意を表します。この重要なマイルストーンは目前に迫っており、リニアコライダー研究が次のステージへと進 展することを心待ちにしています」と、述べている。

英語原文