荻津 透氏、槙田康博氏、菅野未知央氏、超伝導科学技術賞受賞

2012年3月12日

社団法人 未踏科学協会が授与する「第16回超伝導科学技術賞」を、KEKの3名の研究者が受賞しました。

受賞対象となった技術開発・研究テーマは「ニュートリノビームライン超伝導磁石システムの開発と安定運用」と「高温超伝導線材の機械的特性に関する研究」の2つ。「ニュートリノビームライン超伝導磁石システムの開発と安定運用」では、荻津透教授(J-PARCセンター低温セクションリーダー/KEK超伝導低温工学センター)および槙田康博准教授(同サブリーダー/KEK素粒子原子核研究所)が、「高温超伝導線材の機械的特性に関する研究」では、菅野未知央助教(超伝導低温工学センター)が受賞しました。

荻津、槙田の両氏は、日本原子力研究開発機構(JAEA)とKEKが共同運営しているJ-PARC陽子加速器施設を用いたニュートリノ振動探索実験で、主リングから取り出された一次陽子ビームを、岐阜県神岡に設置されているニュートリノ観測装置(東京大学宇宙線研究所)に照準を合わせ発射するための超伝導磁石・冷却システムの開発、建設を共同で推進するとともに、完成後の安定な運用を実現しました。特に、「単層コイルでの二極、四極複合磁場超伝導磁石と超臨界ヘリウム強制冷却」技術を融合、実用化し、粒子加速器分野での超伝導応用・低温技術の飛躍的発展および長期運用における安定性、経済性の実証に大きく貢献したことが、高く評価されたものです。

菅野氏の受賞は、高温超伝導線材の応用展開に不可欠な機械的特性の向上を目指した基礎研究の多大な業績が評価されたもので、菅野氏と京都大学の落合庄治郎氏が連名で受賞しました。菅野氏の業績は前任地の京都大学で行った研究成果で、非常に固く、脆いセラミック材であるビスマス(Bi)系、イットリウム(Y)系等の超伝導線材の電磁機械的特性について、独自の工夫をこらした試験装置によって信頼性が高く系統的な評価を重ね、次世代高温超伝導磁石設計に不可欠な基礎的データの提供に貢献しました。また、臨界電流のひずみ依存性に関して、放射光X線回折による内部ひずみの解析を組み合わせた研究にも成果を上げています。これらの業績が高く評価され、今回の受賞につながったものです。

超伝導科学技術賞は、社団法人 未踏科学協会の超伝導科学技術研究会が創設した、超伝導に関係する分野で卓越した研究成果をあげた研究者を顕彰するもので、基礎研究において世界的なインパクトを与えた研究者、応用開発において、マイルスト-ンとなる高度な技術進展に寄与した研究者、または研究開発あるいは国内国際交流において、斯界分野の振興に大きな役割を果たした研究者に授与されます。

ニュートリノ実験用超伝導ビームライン外観

SPring-8の多軸ゴニオメーターと小型引張試験装置を組み合わせた超伝導材料の内部ひずみ測定装置

第16回超伝導科学技術賞受賞者と研究・技術開発テーマ

(特別賞)
岩佐 幸和 殿
「超伝導大型応用の基礎技術開発」

(超伝導科学技術賞)
平松 秀典 殿、片瀬 貴義 殿、石丸 喜康 殿
「鉄系超伝導体薄膜材料に関する先駆的研究」

落合 庄治郎 殿、菅野 未知央 殿
「高温超伝導線材の機械的特性に関する研究」

佐保 典英 殿、松田 和也 殿、西嶋 規世 殿、田中 弘之 殿
「省電力超小型の強力超伝導バルク磁石システムの開発」

荻津 透 殿、槙田 康博 殿
「ニュートリノビームライン超伝導磁石システムの開発と安定運用」

山口 作太郎 殿、浜辺 誠 殿
「高温超伝導直流ケーブルシステムの先駆的研究」