石徹白晃治氏が第6回(2012年)日本物理学会若手奨励賞を受賞

2012年02月14日

2012年2月14日

image_01.jpg日本物理学会若手奨励賞を受賞した
石徹白氏
高エネルギー加速器研究機構(KEK)素粒子原子核研究所に所属する石徹白晃治(いしどしろ こうじ)研究員が第6回(2012年)日本物理学会若手奨励賞(宇宙線・宇宙物理領域)を受賞しました。本賞は将来の物理学を担う優秀な若手研究者の研究を奨励し、物理学会をより活性化するため設けられました。3月24日から27日にかけ関西学院大学で開催される日本物理学会第67回年次大会では、若手奨励賞受賞者による受賞記念講演が実施される予定となっており石徹白氏は宇宙線・宇宙物理領域の受賞者として講演を行います。

石徹白氏が本賞を受賞するにあたり対象となった研究は、石徹白氏が東京大学大学院の博士課程在学中に行った研究です。石徹白氏は世界に先駆けて新しいタイプの重力波検出器(ねじれ型アンテナ)を開発。検出器の感度の向上が難しく従来の研究では調査されてこなかった低周波領域の重力波探索の可能性をひらきました。

重力波は約90年前に物理学者のアルバート・アインシュタインにより存在が予言され、その後1993年にノーベル物理学賞を受賞したジョセフ・H・テイラー・Jr.とラッセル・A・ホルスにより間接的に存在が証明された時空の歪みの波です。しかし、現在に至るまで重力波の直接検出に成功した例はありません。もし、検出に成功すれば一般相対性理論の検証や重力波を用いた新しい天文学の開拓、宇宙初期の様子の解明といった天文学や宇宙論の研究にとって重要な知見が得られる可能性があります。このため、重力波の直接検出が世界中で期待されています。

特に、低周波の重力波は中型から超巨大のブラックホールが形成される際や、宇宙が出来た際に生じた時空の歪みに対応する可能性があり、ブラックホール形成のメカニズム解明の手がかりとなるだけでなく、誕生直後の宇宙の様子を探る大きな手がかりになるとされます。

石徹白氏は、重力波検出のため下図のような重力波検出器(ねじれ型アンテナ)装置を設計開発しました。重力波により回転する逆T字型の棒を超伝導のピン止め効果で安定に支持し、さらに重力波検出の障害となる要因を評価分析し徹底的に取り除くことで、重力波の検出感度を高めることに成功しました。また、氏の開発した装置の技術は超伝導技術の応用形態として新しいものでした。2009年の8月には開発した重力波検出器により観測を実施しました。残念ながら重力波の検出には至らなかったものの、世界に先駆け低周波帯の重力波検出の可能性を開くこととなりました。

image_02.jpg石徹白氏が設計開発した重力波検出器。赤い矢印が、重力波検出の要となる超伝導のピン留め効果を利用した逆T字型の棒。

研究成果は国内外で大きな注目を集め、米国物理学会の発行するフィジカル・レビュー・レター誌(Physical Review Letters)で「重要で興味深い論文」として注目論文(Editor's Suggestion and featured in Physics)に選ばれました。

石徹白氏は現在、KEKの素粒子原子核研究所においてCMB(宇宙背景放射)実験グループに所属しています。CMB実験グループでは宇宙初期の様子を明らかにするため宇宙背景放射の中に現れる重力波の痕跡を捉えることを目指しています。氏は、そうした研究の1つとしてアメリカで行われているQUIET実験に携わり、QUIET実験で用いる検出器の更なる性能向上のため研究を行っています。CMB実験グループにおいて石徹白氏の経験が活かされることが期待されています。