札幌で先端加速器シンポジウム 鈴木機構長が講演

2012年01月31日

2012年1月31日

2012年1月27日(金)北海道大学 学術交流会館(北海道 札幌市)にて、先端加速器科学技術推進協議会(AAA)、北海道大学およびKEKの共同主催により「先端加速器科学技術推進シンポジウム in 北海道『先端加速器の世界 いのちを守る、宇宙を創る』 が開催されました。

このシンポジウムは、AAAが中心となって、先端加速器技術の可能性や意義を広く国内外に発信することを目的にシリーズで実施しているもの。今回のシンポジウムは、2012年第1回、通算11回目の開催となります。学生や地元産業界を中心に約130名が参加しました。

北海道大学では現在、陽子線を用いてガンを治療する「北大陽子線治療装置」の建設が進んでいます。そこで今回は「先端加速器ができること」をテーマに、産業界における最先端技術分野や、医療分野での応用例、高エネルギー物理科学分野の最新の研究について講演が行われました。

開会に先立ち、佐伯浩 北海道大学総長が主催者を代表して開会挨拶を行い「先端科学とは最初はよくわからないものが、だんだんと広く利用応用が拡張して行くもの」とし「先端科学によって若い世代が世界に羽ばたいて欲しい」と先端科学への期待を述べました。続いて、松岡雅則AAA事務局長から協議会の事業内容の紹介がありました。

講演会では、北海道大学大学院工学研究院の鬼柳(きやなぎ)善明教授が「次世代の産業を支える先端加速器科学」と題する講演を行いました。鬼柳氏は、医療分野と工学を融合させる「医工連携」推進の中心的存在です。講演では、加速器の物質の性質を変えることのできる働きについて解説し、自動車のタイヤのゴムの強化や滅菌など、すでに実用化されている産業応用について解説。「加速器の産業応用が急速に広がっていることを感じている。J-PARCでは産業応用推進も積極的に進められている」と述べて、今後の更なる応用への期待を語りました。

その後、北海道大学大学院医学研究科の白𡈽博樹教授が「いのちを守る先端加速器 -陽子線がん治療について-」の講演で、医療分野における加速器の応用について解説しました。白𡈽氏は講演の中で「身体の機能を温存でき、どの部分にも対応できるため、放射線治療を希望する人が増えているが、欧米に比較すると放射線治療が占める割合はまだ低い」と、放射線医療の現状を解説。日本では放射線専門医が少ないという問題点を指摘するとともに、物理工学の面から医学および医療に従事する「医学物理士」養成の必要性について述べました。また、最先端の取組みとして、京都大学と共同で進めている「分子追跡放射線治療装置」の研究開発について紹介しました。この装置は、体内を移動するガンを自動的に追跡して治療する装置で、正常組織への不必要な放射線照射を最小化するとともに、様々な種類のガンにテーラーメイドの治療法を提供できることが期待されています。白𡈽氏は「今後も加速器科学との連携を深めて行きたい」と述べました。

最後に、KEKの鈴木厚人機構長が「ビッグバンを再現する究極の加速器 国際リニアコライダー計画」と題する講演を行いました。講演の中で鈴木機構長は、宇宙の誕生の謎やその解明に向けた加速器をつかった研究の歴史を説明しました。また現在稼働中の最大の加速器「大型ハドロンコライダー(LHC: スイス、欧州合同原子核研究機関)」における最新の研究成果について解説しました。そのLHCと比較する形で次世代加速器構想である「国際リニアコライダー(ILC)」について「LHCは新しい道を切り拓き、ILCはそれを舗装する」と例え、ILCは精密な測定が可能であると、その性能の概要と建設の意義を述べました。また、ILCの実現に向けて日本が果たすべき役割について「世界の研究者から日本への期待が大きくなっている」と述べました。最後に、テレビのニュースで取りあげられた、海外研究者の日本国内ILC建設候補地視察について触れ「今後も、加速器に関する理解増進活動に邁進したい」と講演を締めくくりました。

image_01.jpg講演中の鈴木厚人KEK機構長

image_02.jpg講演会の様子