LHC実験の最新成果12月13日(火)に発表

2011年12月9日

スイス・ジュネーブ郊外にある欧州合同原子核研究機関(CERN)1)の大型ハドロン衝突型加速器(LHC)2)は、ヒッグス粒子やテラスケール (1012電 子ボルトのエネルギースケール)での新しい素粒子現象の発見を目的に建設され、2009年より本格稼働を始めました。特にヒッグス粒子は、素粒子の質量の 起源と考えられている未知の素粒子であり、世界中の研究者が40年の長きにわたって様々な実験で探索しており、LHCでの発見に強い期待が寄せられていま す。

2011年にLHCは順調に稼働し、二つの実験グループ(アトラス実験3)とCMS実験4))は目標にしていた積算ルミノシティ5)1fb-1(インバースフェムトバーン)6)を大幅に超え、それぞれ約5fb-1のデータを収集しました。両実験はこれらのデータをもとにヒッグス粒子の探索を進めてきました。8月の国際会議で既に1~2fb-1のデータを基にした結果を発表し、ヒッグス粒子の質量の範囲を115-141GeV/c2 7)の狭い領域と476GeV/c2以上の領域に絞り込みました。

13日(火)22時(日本時間)より、アトラスとCMSの両実験グループが実験それぞれが、全データをもとにしたそれぞれの最新の研究結果を、 CERNにおいて発表し、その後記者会見を行うことになりました。日本の関係者も両実験の結果については会見数時間前に初めてその内容を知ることになりま す。日本でも、東京大学素粒子物理国際研究センターにおいてCERNと中継をつないで会見を行います。

発表の内容についてはこちらのホームページでも随時掲載する予定です。

12月13日のLHC最新結果の発表について - LHCアトラス実験オフィシャルブログ

注)アトラス日本グループとは、アトラス実験に参加している日本の研究者グループのこと。現在の参加メンバーは、次の15の研究機関に所属してい る:高エネルギー加速器研究機構、筑波大学、東京大学、東京工業大学、首都大学東京、早稲田大学、信州大学、名古屋大学、京都大学、京都教育大学、大阪大 学、神戸大学、岡山大学、広島工業大学、長崎総合科学大学。

用語解説
1)欧州合同原子核研究機関(CERN)
ヨーロッパ諸国により設立された素粒子物理学のための国際研究機関。設立は1954年。所在地はスイス・ジュネーブ郊外。加盟国はヨーロッパの20カ国。 日本は、米国、ロシア等と共に、オブザーバー国として参加している。世界の素粒子物理学研究者の半数以上(約10000人)が施設を利用している。

2)大型ハドロン衝突型加速器(LHC、Large Hadron Collider)
2009年より運用を開始した大型の陽子・陽子衝突装置。現在の衝突エネルギーは世界最高の7TeV(テラ電子ボルト)であり、ヒッグス粒子や超対称性粒子などを直接研究出来る唯一の施設である。2014年から衝突エネルギーを14TeVにあげる予定。

3)アトラス(ATLAS)実験
A Troidal LHC Apparatusの略。LHCを用いた二大実験の一つで、世界中から約150の研究機関が参加する国際共同研究である。日本からも東京大学やKEKを始めとする15の大学・研究機関が参加。ヒッグス粒子や超対称性粒子の探索や研究など、素粒子物理最先端の研究を行うことが可能である。

4)CMS実験
Compact Muon Solenoidの略。ATLAS実験と同じ研究目的を持つ、LHCを用いた二大実験の一つ。

5)ルミノシティ(単位:cm-2s-1)
ビームとビームの衝突地点において、単位面積あたり毎秒何回ビーム粒子が交差したのかを表す指標で、衝突型加速器の要となるビームの衝突性能に相当。粒子 反応の起こりやすさとして、面積を考える。イメージとしては、的の大きさ(断面積)が大きいとぶつかって反応しやすいのに対して、的の大きさが小さいと反応が起きにくい。素粒子の反応は起こりにくく、この面積が10-36 cm2(pb:ピコバーン)程度と非常に小さいため、大きなルミノシティで実験を行う必要がある。

6)1fb-1(インバースフェムトバーン)
1インバースフェムトバーンとは上で述べた典型的な素粒子の反応の大きさである。1pbの反応が1000回起きるルミノシティに対応する。

7)GeV/c2 (ギガ電子ボルト)
質量の単位で、水素原子の質量が約1 GeV/c2