Belle実験による世界初の「4クォーク荷電粒子」観測

‐7年越しにCERNのLHCb実験が検証‐

2014年4月23日

小林誠・益川敏英両博士のノーベル賞受賞より1年前の2007年、Belle実験グループは国際会議において、4つのクォークからなると考えられる電荷をもつ新粒子、Z(4430)の発見を報告しました。その結果は翌年、素粒子物理学ではもっとも権威ある専門誌フィジカルレビューレターズにおいても掲載されました。

これまで知られていた粒子の例。含まれる素粒子は3つまでとされてきた。この発見からさらに遡る2003年、Belle実験ではX(3872)と名付けられた「不思議な新粒子」が観測され、フェルミ研究所のCDF実験、D0実験や、SLAC研究所のBaBar実験などで追試・検証されました。この粒子は、それまで信じられてきた素粒子モデルの枠組みにはおさまらない質量と安定性を持っており、これまで観測されたことのなかった4つのクォークで構成されている可能性について、活発な論議が巻き起こりました。しかし、電気的に中性であるX(3872)は、その内部に含まれると考えられたチャームクォーク(c)とその反粒子である反チャームクォーク(c)のエネルギーの高い状態であることも否定はできないため、4つのクォークで構成されているという結論には至っていません。

一方、Z(4430)は電荷を持っていました。Z(4430)に含まれると考えられた、ccの2つだけでは電荷がゼロになるので、Z(4430)が電荷を持つためには少なくともさらに2つの軽いクォークが必要です。つまりZ(4430)粒子は、世界で初めて観測された、まぎれもなく4つのクォークからなる、新しいタイプの粒子だったのです。

今回発見されたZ(4430)粒子。電気的な性質から、内部に4つのクォークが含まれることが分かった。

Belle実験のこうした明白な発見にもかかわらず、追随の実験グループからの確認は、なかなか実現しませんでした。この粒子の存在を再確認するにはKEKB/Belleと同等の高性能な加速器と高感度の実験装置、そしてなにより大量のデータが必要であり、それを満たす実験グループは世界的にもまれであったからです。

しかしついに待望の追試実験が、Belleの発見から7年後の今年CERNのLHCb実験によってなされました。LHCb実験は2014年4月7日、Z(4430)を「再発見」し、Belle実験の2007年の発見が確認されたと発表したのです。

これまで観測されてきた基本的な粒子「クォーク」の存在状態は、陽子や中性子など原子核を構成する粒子(核子)と、湯川秀樹博士が予言した、それらの仲介をする中間子の2種類に大別され、それぞれ、クォーク3個(核子)あるいはクォーク2個(中間子)の組み合わせで出来上がっていると考えられてきました。実際にX(3872)が発見されるまで、素粒子実験で観測されるすべてのクォークの状態はこの2種類のどちらかで観測されました。Belle実験が発見し、今回LHCb実験でその存在があらためて検証されたZ(4430)が、4個のクォークから構成されていることは疑いの余地がなく、これまでクォークの状態を決める法則のひとつとされてきた量子色力学(QCD)の解釈に対して大きな変革をもたらすことになります。この発見は、中性子星におけるクォークの様子など、宇宙物理学の議論にも大きな影響を与えることになるかもしれません。