理系女子キャンプ2013 開催

2013年4月12日

4月3日(水)~4日(木)、KEKつくばキャンパスにて理系女子を対象としたイベント「TYLスクール理系女子キャンプ」が開催されました。これは、理系分野に興味のある女子高校生に、実験や研究の面白さを伝えるとともに、今後の進路決定の支援を行おうというもの。2回目の開催となる今回は、全国から29名の皆さんが参加してくれました。

メモ:本イベントを主催する「Toshiko Yuasa Laboratory」通称TYLは、KEKとフランス原子核素粒子研究所、フランス宇宙基礎科学研究所が共同で行っている仮想ラボ。フランスで活躍した初の日本人女性物理学者である湯浅年子氏にちなんで名付けられたこのラボでは、日仏の協力関係の更なる深化、女性研究者の育成をも念頭に活動を展開しています。

卵を割らずに落とすには?キャンプの目玉プログラムは、初日の「卵落とし実験」。与えられた道具を使って卵を保護する装置を作り、決められた高さから卵を割らずに落下させるという実験です。実はこの実験、昨年の第1回キャンプで実施したところ楽々クリアされてしまったため、今年はさらに高さを上げて、3m、7m、11m、13mの4地点を用意しました。

使える道具は、紙、割り箸、トランプ、針金等々。3人ずつのグループに分かれて早速装置の製作開始です。紙などのパラシュートを付ける他、トランプを立体的に組み立てて卵を中心に収める装置、重さを調整して着地する面を決め、そこからの衝撃を受けないよう卵を宙ぶらりんにする装置等々、個性的なビジュアルの装置がたくさん完成しました。

さて、実験の結果は...10グループ中4グループがパーフェクト(すべての高さから落下成功)!これには指導係の研究者やスタッフもびっくりでした。

生徒からは、「繰り返しテストをしていく中で、装置を改良していくのはとても楽しかった。成功したときの達成感がすごく良かったです」という感想もあり、失敗の原因を突き止め、改善していく実験の面白さを味わってもらえたような気がしました。

一番高い13mからチャレンジ。

やったー!割れてないよ!

練習用のゆで卵。「終わったらゆで卵は食べても良い」って書いてある...

夜には「教えて先輩!理系な女子会@KEK」と題されたパネルディスカッションが開催されました。これは今年から新たに企画されたプログラムです。パネラーとして参加してくれた東京大学、奈良女子大学、お茶の水女子大学、千葉大学の女子大学院生5名が、理系大学生・大学院生としての生活や、自身の行っている研究とその魅力について紹介し、参加者からの質問に答えました。

2日目の講義では、高エネルギー実験学がご専門の東京大学素粒子物理国際研究センター助教 金谷奈央子氏、ダークマターの研究を行っているフランスのLAPP研究所研究主任 シルビー・ロージェ氏、X線による物質の分析研究を行っている東京電機大学工学部准教授 保倉明子氏の、3名の女性研究者がご登壇。ご自分の研究についてだけではなく、これまでどのようなキャリアを積んできたのか、また、どのような経緯で現在の研究を行うようになったのかを紹介しました。

保倉氏の講義では、これまでに行ってきたX線分析実験の結果と、そこからわかる植物の優れた機能についてお話されました。特に、植物を使って土壌の有害物質を除去、さらにその植物を資源として利用するという「ファイトレメディエーション」という技術については、生徒たちから実用化に関する質問が出るなど、関心の高さが窺えました。

講義の合間に「質問BOX」に入れられた質問には、3名の研究者それぞれが回答。「宇宙に加速器って作れますか?」「子供のころの夢は?」「植物による土壌の浄化では、どのように植物と有害物質を分離しますか?」等、自由な質問が投げかけられました。印象的だったのは、最後の質問「研究と私生活は両立できますか?」。これには3名の研究者全員に答えて頂きました。

金谷氏「両立できるよう努力はしています。旦那さんと離れて住んでいますが(金谷氏はスイス、旦那様は日本在住)、周りの皆さんの理解と協力もあるので助かっています。」

保倉「生活とのバランスを取りながら研究しています。やりたいことはやりたい、自分で決めた道だから頑張れます。ただ、自分一人では両立は難しく、周りの理解や協力はとても大事です。」

シルビー「結婚して27年、子供が2人います。両立は簡単なことではありませんが、旦那さんも研究者なので、どこが大変かわかってもらえるのがありがたいです。」

なるほど...。泊まり込みで実験があるときなどは、やはりご家族など周囲の協力は必要そう。でも自分の研究について語る先生方は本当に楽しそうでキラキラしていて、とっても素敵だなと感じました。

さて、最後のプログラムは施設見学。4つのグループに分かれ、電子陽電子入射器(LINAC)、放射光科学研究施設フォトンファクトリー(PF)、KEKB加速器、Belle測定器の内、一か所を選択して見学してもらいます。Belle測定器の見学グループは、まず指導係のKEK素粒子原子核研究所講師 坪山透氏から、粒子の測定方法について説明をうけたのち、測定器が設置されている実験ホールへ。実物を見ながら、解説と質疑を行いました。

測定器に使われているエアロゲルを触ってみる。とっても軽くて不思議な結晶です。

Belle実験ホール。

最後に、修了証書を一人ずつ手渡され、全プログラムが終了しました。1日目の初顔合わせでは少し緊張した面持ちだった皆さんですが、2日目終盤ともなるとかなり打ち解けて、連絡先の交換や記念写真の撮影など、和気あいあいとした雰囲気になりました。世話係として参加してくれた、近い世代の先輩理系女子とも積極的に話をする様子が見られ、これからの進路を決定する際の、良い経験になったのではないかな、と感じました。

修了証書授与。お疲れ様でした。

見学の合間の待ち時間も女子トークが尽きません。

講師としてご参加頂いた保倉氏は、研究職の魅力について、
「研究の面白さは、自分で課題を見つけてそれを解いていくところ。学校では、"すでに分かっていること"を学ぶことが中心ですが、研究者は自分が疑問に思っていることが"問題"になります。皆さんもぜひ興味のあることにチャレンジしていってください」
とコメント。皆さんも理系女子キャンプで自分だけの"問題"を見つけてみてはいかがでしょうか?来年のご参加、お待ちしています!

関連サイト

TYL理系女子キャンプ

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