シリーズBelle II【第4回】
中央飛跡検出器

2013年1月17日

加速された電子と陽電子の衝突によって生まれた粒子たちが、「(1)どのような向きに、(2)どのくらいの勢い(運動量、またはエネルギー)を持った、(3)どのような種類の粒子が通過していったのか」、そして「粒子の飛んだ向きを測るために、衝突点を測定器で取り囲んで粒子の通過位置を測定する」のが測定器の主な目的です。衝突で生まれたたくさんの粒子たちのこれらの情報から、電子と陽電子が衝突して何が起きたのかを探る事ができ、基本法則の解明につながります。中央飛跡検出器(CDC:Central Drift Chamber)は、主に位置情報と、運動量情報を収集するために設置されます。

Belle IIの内部構造 ©Rey.Hori

現在開発中のBelle II測定器用のCDCは筒状の装置で、筒の内側の半径が16センチメートル、外側の半径が113センチメートルです。以前のBelle測定器のCDCは、内径が7.7センチメートル、外径が88センチメートルでしたので、一回り大きくなります。これは、B中間子の崩壊点をよりよく捉えるためにCDCの内側に設置するバーテックス検出器の外径を大きくしたため、また、CDCの外側に設置する粒子の種類を同定する測定器が薄くできたために、内径、外径ともに大きくなりました。

CDCは多線式ガスチェンバーのひとつで、30ミクロンの金メッキタングステン・センスワイヤー14336本と、126ミクロンのアルミニウム合金(A5052)・フィールドワイヤー42240本、全部で56576本のワイヤーが張られます。また使用するガスは、ヘリウムとエタンの混合ガスです。

加速器がSuperKEKBにアップグレードされることで、電子と陽電子の反応頻度は、これまでの40倍になります。これに対応するために、CDCでも、これまで一秒間に500回の率でデータ収集を行っていたものを、60倍の3万回の収集を可能にするために、高速で耐放射線度の高い電子回路に置き換えます。

更に、発生した素粒子反応を記録する/しないの判断(トリガー)のために、ビーム軸に垂直な面上での通過粒子の2次元位置情報に加え、少し斜めに角度をつけて張ったワイヤー(ステレオワイヤーと呼ばれる)の情報から得られる、ビーム軸方向の位置情報を含めた3次元情報を供給します。この情報の追加により、ビームがビームパイプや、パイプ中の残留ガスと衝突して発生した反応と、電子と陽電子の衝突反応との区別の効率の向上を行います。

CDCの開発を行っている素粒子原子核研究所の宇野彰二教授にお聞きしました。

宇野彰二 KEK素粒子原子核研究所教授― 今の作業状況はいかがでしょう。

ちょうど、ワイヤー張りが始まったところです。これから一年以上をかけて行います。ワイヤーは張るだけではなく、テンションがかかっているかをチェックし、高電圧をかけるケ−ブルを通し、信号が出力されるかを検証し、出力を記録する電子回路を組み入れるという一連の作業をこれから行っていきます。

―Belle II用の開発にあたって特徴となる点は何でしょう。

Belle II用のCDCでは、ワイヤーを外側から内側に張っていきます。シリンダー状のワイヤー測定器としては、初めてではないでしょうか。普通はシリンダーの外側に人が立つために、内側から外側に向けて張ります。ところが、今回のCDCでは、内径が大きくなったために、人が内側に入れます。そこで、筒を立て置きにした状態で、内側から張れることに気がつきました。ワイヤーを張るにはテンションをかける必要があり、ワイヤーを保持する上下の蓋には、約4トンもの力がかかります。シリンダーの内筒は衝突点に近いために、物質量の大きいものを使うと、粒子が内壁と反応してしまうので、物質量を減らす必要があります。そのため、内壁では、4トンもの力を支えることができないために、テンションを支えるための別構造を付け加えて作業を行う必要がありました。ところが、今回は内側から張るために、外壁に力を支えてもらえるので、余分な構造を加えることなく、ワイヤー張りができるようになりました。

― CDCグループの構成を教えてください。

CDCグループは、日本から KEK、大阪大学核物理研究センターなど、外国から中国高能研、韓国高麗大学、台湾大学、ベトナム物理研究所、マラヤ大学、タイのチャンマイ大学などが参加しています。

ワイヤー張りの様子

CDCの作業の関係者(一部)。後ろに見えるのがBelle II CDC(左)とBelle CDC(右)

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