シリーズBelle II【第3回】
ピクセル型検出器

2012年11月14日

今回のハイライトは、現在高度化の改造が進んでいるSuperKEKBプロジェクトにおけるBelle II測定器で、髪の毛の太さの位置の違いも分かるほど精密に粒子の位置を測定する「ピクセル型検出器」の開発状況についてお知らせ致します。

ピクセル型検出器はビームパイプのすぐ外側に設置され、衝突点に最も近く位置する検出器です。ピクセルとは、デジタルカメラなどの撮像素子にある画像最小単位のことで、その一つ一つは、光があたったときに電気信号を発生する微小な半導体回路で構成されています。この測定器でも荷電粒子が通過したときに、ピクセルから電気信号が発生するようになっています。その信号を出したピクセルの位置を知ることで、荷電粒子の通過位置がわかります。

図1 Belle II測定器の全体図。ピクセル型検出器は測定器の最深部に設置される。 ©Rey.Hori

Belle IIが採用したのは、ドイツの共同研究者がこれまでに開発を行ってきた、デプフェット(Depleted P-channel Field effect transistor:P−チャンネル空乏層型電界効果トランジスタ) ピクセル型検出器です(図2)。空乏層と呼ばれる電荷を運ぶものがない層を荷電粒子が通過すると、はじき出された電子が内部ゲートとよばれる領域に集められます。空乏層の外の外部ゲートから電圧をかけ、内部ゲートに集められた電子の数に比例した電流を、読み出すことで、荷電粒子がそのピクセルを通過した位置とともに、その粒子がピクセルに落としていったエネルギーの情報も得られます。

図2 ピクセル型検出器の概要と回路図この方式では、ピクセルの境界領域の不感領域が非常に小さく、また、1つのピクセルのサイズが50ミクロン×50ミクロンなので、精度よく荷電粒子の位置を特定することができます。

このピクセル型検出器を1層目として、ビームパイプの中心から1.4センチのところに、長さ9センチ×幅1.5センチの領域をカバーするモジュールを8枚、2層目として2.2センチのところに長さ12.3センチ×幅1.5センチの領域をカバーする12枚を設置。全部で約800万ピクセルを設置します。また、衝突点からきた粒子の向きを乱す原因となる物質量が抑えられ、厚みが75ミクロンと薄く設計されています。これらすべてのピクセル信号を読みだすには約20マイクロ秒かかります。

読み出し回路を含むピクセル検出器一式に関する基本レイアウトそのもの、設計や製造、試験までの全てが、Belle II実験グループに参加している、ドイツのマックス・プランク研究所、ボン大学、ハイデルベルグ大学などを中心としたヨーロッパグループの研究者自身によって進められています。

図3 ピクセル型検出器(模型)図3がピクセル型検出器の模型です。中央に第2層目の12枚のモジュールを巻き付けますが、この写真では、紙の模型が置いてあります。両側の黄色のストリップは電気絶縁性に優れ、金属配線との熱膨張によるひずみが生じにくいカプトンで覆われた信号ケーブルです。そのカプトンのストリップの下には、見えていませんが、冷却のための摂氏マイナス20度の液体二酸化炭素を通すパイプが巡らされています。

来年の秋には試作機によるビームテストが行われる予定です。

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