進歩を示す-詳細ベースライン設計報告書

2012年5月24日

ILCニュースライン2012年5月17日号より

韓国・大邱で開催されたアジア地域将来加速器委員会(ACFA)-KILC12会議中の国際測定器諮問委員会(IDAG)の様子。画像:高エネルギー加速器研究機構(KEK)

この5年間で、物理・測定器研究者グループはILCのために十分な性能がある測定器設計の確立に向けて、かなりの進歩を遂げた。これらの業績については、今年末までに詳細ベースライン設計報告書(DBD)に集約されることになっている。DBDは、測定器趣意書時代の完了と、研究者グループが次ステージへと向かう転換点を示す、明確なマイルストーンとなる。DBDの完成は非常に重要な仕事と考え、DBDの作成計画の検討はすでに2010年に始めている。昨年、DBDフォーマット・ワーキンググループにより、DBDについて綿密な立案が始められた。ワーキンググループは、各巻の基本的な構造と完成までのスケジュールを練り上げた。この議事録は、ウェブ・ページで見ることができる。

スケジュールの第一段階は、計画された測定器編の各章の概要について国際測定器諮問委員会(IDAG)がプレビューを行うことだった。測定器グループは昨3月に、測定器章の内容の構成案を準備し、これらは序章の内容とともにアドバイスを求めるためにIDAGに提出した。IDAGは、先月、韓国・大邱で開催されたACFA KILC12ワークショップ中に会合を開き、マネジメント、SiDとILDという2つの測定器グループとそれぞれ別に議論を行った。IDAGはさらに、DBDに向けて進行中である1TeV(テラ電子ボルト)ベンチマーク反応のための新たなシミュレーションの状況についてソフトウェア共通作業グループから話を聴き、また物理学編の研究についてMichael Peskin氏から状況を聴いた。

IDAGは、DBDの内容や様式を改善し、執筆作業をスムーズにするために、私にいくつかの助言をしてくれた。助言の中には、DBDの目的をはっきりさせ、それをより包括的なものにするのに役立つ点が盛り込まれている。技術的に有用な提案もあった。IDAGがDBDに関する私たちの取り組みを強化してくれる提案を感謝し、私はその多くを採用したいと考えている。IDAGにより支援された重要な点を以下に解説したい。これは研究者グループにとっても知る意味があることだ。

最初にIDAGが確認したことは、全ての作業担当者が対象とする読者は、高エネルギー物理学者だということである。DBDの特徴についてもコンセプトグループとは相当な期間に亘って議論し、測定器の実現可能性と性能について、そして、物理範囲に関したはっきりした検討内容について、近隣分野の同僚を納得させるのに十分詳細な情報を盛り込むことを了解していた。しかし、DBDが完成した時には、資金提供機関を含むより広い研究者グループに向けDBDの中身を知らせるのは望ましいことでもある。これは、国際共同設計チーム(GDE)と協力して、技術設計報告書とDBDの両方を併せた要旨の別冊と、広報文書を作ることで実現する。

測定器編は、序章、共通課題の章、2つの測定器章からなる。IDAGの提案により、共通課題の章がつくられ、そこで、二つの測定器に共通する課題は、序章や各測定器章から移動する。共通課題の章により、DBDはよりはっきりとした形でまとめられ、重複を減せるだろう。読みやすく、包括的に全体を網羅するため、話題の割り振り方について、目下詳細な論議がDBDフォーマット・ワーキンググループによって続けられている。

共通の章についての重要な助言が次世代測定器開発に関してあった。新技術や研究が発展すると、測定器が改良できるというのは常のことである。どこに改良の可能性が期待できるか分かっているコンセプトグループは、更に測定器開発を続けることを望んでいる。この点について、IDAGの提案は、私たちが計画したものと同じであり、「まだ準備できていない」という間違った印象を与えないように、今後の測定器開発の活動は、各測定器章ではなく、共通課題の章に置くというものだ。測定器章では、十分な性能の測定器システムが、これまでに達成された技術に基づいて実現できることを提示する必要がある。

測定器章の執筆者が導入章にどんなことが書かれているかを前もって知ることができるよう、導入章は、先に書かれるべきであるという、IDAGの提案を取り入れ、私たちはできるだけ早く、導入および共通課題の章の内容と著者を決定し、執筆する。

シミュレーションに関する助言もあった。そのひとつは、1TeVでの新たなベンチマークの結果を示す前に、まず500GeV(ギガ電子ボルト)反応のための既存のシミュレーション調査についてまとめることだ。これも、読者を混乱させないためには重要な点である。現在、測定器グループが新たなベンチマークの計算を完了すべく邁進しているが、一方で、TDR/DBDの主要な焦点は、500GeV物理学の堅固な設計を達成することにあり、500GeVのベンチマークが、測定器趣意書のためにすでにいくつも研究されていることを忘れてはならない。この点は、2つの測定器グループに申し送られた。

すぐに執筆を進めることができるように、フォーマット・ワーキンググループは計画を間もなくまとめる。読者にはっきりしたメッセージを提示するために、個々の測定器章の後にまとめの章をつくることも検討している。私たちは、その章で、ILC測定器研究の状況は、所有している技術により、2つの測定器のベースライン設計が実現可能であり、ILCの物理学目標は達成可能であると明言できる段階にあること、そして、今後の研究が、これらの測定器コンセプトの実現をより近づけてくれるだろうと結論したい。

※ この記事は、国際リニアコライダー物理研究責任者である山田作衛東京大学名誉教授・KEK名誉教授執筆によるリサーチ・ディレクター レポートを翻訳したものです。