ILC技術設計フェーズ:加速空洞の性能 着実に向上

2012年4月17日

ILCニュースライン3月29日号より

現在のILC超伝導高周波空洞設計は「TESLA(テスラ)タイプ」と呼ばれる9セル空洞がベースになっている。設計加速勾配は、1メートルにつき35メガボルト(MV/m)で平均8×109以上のQ値(Q0)に設定されている。これは、31.5MV/mおよび Q値1×1010で安定的長期運転の実現をめざした数値だ。ILC超伝導高周波(SCRF)システムのR&D計画では、中間目標として、空洞製造性能達成率50%以上、そして技術設計フェーズ終りまでには90%以上に到達することをめざしている。工業化準備の進捗状況という観点から計画の進度を評価するため、テスラ技術共同研究グループの技術アセスメントに従い、空洞製作と表面処理のための標準手法を確立した。

技術設計フェーズでは、私たちはグローバルデータベースを構築するにあたり、生産性能達成率の明確な定義を定めた。それは、空洞評価のルールとして、機械的製造後、第1回、そして第2回の表面処理プロセスを経た後に測定した性能達成率を採用する、というものだ。米コーネル大、ジェファーソン研究所(J-Lab)、米フェルミ国立加速器研究所(Fermilab)、ドイツ電子シンクロトロン研究所、そしてKEKからのメンバーで構成される「ILC空洞グローバルデータベース・チーム」 は、データベースを構築するだけにとどまらず、比較されるデータベースが含むべき標準的な性能測定結果とそれに至る製造、表面処理プロセスに対するルールの標準化も担当した。下記の数字は、2006~2011年の間に製造および試験された空洞加速勾配性能達成率の進化を示す。最初のデータは、2009年10月、最新のものは2011年9月に、それまでの蓄積された全データに基づいて評価されたものだ。

空洞加速勾配性能達成率の推移を示すグラフ。一番左(紫)は2009年10月のデータ、一番右は最新データで2011年9月のもの。

9セル空洞の生産性能達成率の推移

今では、空洞加速勾配を改善する方法についての理解がかなり深まっている。たとえば、電解研磨プロセス後のエタノールすすぎと超音波洗浄といった表面清浄手順を確立したことで、電界放出を格段に減少させることができた。また、低電流密度で電解研磨プロセスを行いつつ、継続的に電解研磨液を循環させるという手法を取ることによって、空洞の表面温度をより低温に維持することができるようになり、電界放出を減少させることに成功した。電解研磨プロセスと、それに続くクリーンルーム内の空洞組み立て作業の最適化を計り、それに従って製造を行うことにより、再現性のある空洞製造が可能となった。そして、再現性のある高い空洞加速勾配も実現できたと考えている。空洞表面処理の継続的な改善が行われ、加速勾配を制限する原因について理解が深まった結果、技術設計フェーズの超伝導加速システムの R&D目標である、加速勾配「Q値8×109以上、35MV/mの性能達成率90%以上」の達成は射程距離に入った。最近、加速勾配にプラスマイナス20%の幅を認めるという決定が為されたこともあり、2012年内の目標達成に期待が掛かっている。

用語解説

※ Q値
一定の加速電界をどれだけ効率良く達成できるかを表す指標

※ この記事は、国際共同設計チーム(GDE)プロジェクト・マネージャー、山本明KEK教授によるディレクターズ・コーナーを翻訳したものです。