カソクキッズ連載終了 見えないものをマンガにする難しさ

2011年6月30日

2008年12月からKEKウェブサイトに連載して来た物理コメディマンガ「カソクキッズ」が、6月30日(木)公開の第30話をもって、いよいよ終了と なりました。第30話は、カソクキッズの作者である、うるの拓也さんがこれまでの制作過程を振り返って書き上げた最終章になっています。今週のハイライト では、カソクキッズの制作裏話をお送りします。

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図1 カソクキッズ単行本

「カソクキッズ」の連載は、KEKの活動を十分伝えることができていない、という反省から始まりました。KEKの研究内容である素粒子物理学や物 質・生命科学、そして加速器や測定器を設計、運用するために必要な高度な物理学や数学などは、大学や大学院で物理学を専攻した人だけが学校で習うような専 門的な学問です。そのため、研究活動の解説や用語の説明は難解な専門用語だらけになりがち。この点は、今後の改善課題として残っています。

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図2 カソクキッズ作者、うるの拓也さん。うるのクリエイティブ事務所にて「トキワ荘みたいなアパートでしょ」

でも、難しく思える「物理学」も、実は「自然はどのような仕組みで動いているんだろう?」「宇宙はどうやって始まったのだろう?」といった素朴な疑 問を追究する学問です。もっと多くの人、特に子供たちにKEKの研究内容を伝えるために「マンガ」というメディアを選びました。KEKにとっては一見安易 な選択のようにも思えますが、マンガの書き手にとっては「無茶な注文」だったようです。

「最初に確認したところが『素粒子は球体でいいのか?』ということでした」とうるのさん。素粒子には内部構造がありません。しかし、中身が無ければ 球体にはなりません。どうマンガで表現したら良いのか?「わかりやすくすることが誤解を生むことになってしまうことがある。そこを確認しながら進めるのが 大変でした」。

また、うるのさんは「こんなマンガの書き方をしたマンガ家は他にいないと思っている」といいます。企業や研究所監修の広報マンガの依頼が来る場合に は、明確な原案があり、それに沿った作画が行われることが通常のパターンです。しかし、KEKの場合は、マンガ作成の目的が、個々の研究内容をしっかり 「教える」ことではなく「KEKの推進している研究は何だか面白そう」と思って頂くこと、とするかなり抽象的なものでした。「最初の数回は、原案をもらっ てそれをマンガ的に翻訳するという進め方をしていたのですが、どうもそれでは立ち行かないことがわかってきたのです。そこで、私が各回のテーマからかなり ざっくりとしたネームを起こして、KEKで確認すると言うスタイルに変わって来たのです」(うるの氏)。「かなり大変でしたが、私の立場から読者の視点を 入れることができたので、作品的には良かったと思います」

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図3 カソクキッズのキャラクターデザイン案を見せてくれる高橋さん。ちなみに、フジモト博士のキャラクター は「一発書き」だったとのこと。博士の名前「フジモト」は、ちょうど公開されていた映画の登場人物を参考にネーミング。「タカハシ」は作画の高橋まさえさ んからお借りしています。今年のKEKの一般公開で、生博士探しをしてみてはいかがでしょうか?

月に1回行われる編集会議では、ほぼ完成したネームを元に最終チェックが行われます。「博士たちから刺激をもらっている感じですね。科学者の目の付け方、切り口が参考になる。博士ってこんな風に考えるんだ、ってところが参考になります」。

作画を担当しているのは高橋まさえさんです。カソクキッズが記念すべき(?)デビュー作となりました。連載が始まった2008年には、KEKの小林誠特別 栄誉教授がノーベル物理学賞を受賞。「ノーベル賞にニアミスするのは一生に一度のことだ、って話していたんです。その後に、小林博士をマンガのキャラク ターにするとは思ってもいませんでした」と高橋さんが言う、小林博士からもご了解頂いているキャラクターは、たびたび誌面に登場することになりました。実 は、カソクキッズのキャラクターでモデルがいるのはこの小林博士だけで、他のキャラクターにモデルは存在しません。

キャラクターは、うるのさんの指示で設定されて行きました。「博士は男性と女性の2名で、女性は体育会系のお姉さんキャラで、男性はちょっとマッド なやさしい博士を想定していました」(うるの氏)。KEKにどんな研究者がいるのか調べたわけではなく、全くの空想から生まれたキャラクターだったのです が、2009年の一般公開の時にKEKを初めて訪れた高橋さんは「生フジモト博士(キャラクターそのままの研究者)を発見してびっくりしました」と、熱く 研究を語る研究者たちを見て驚いたと言います。

カソクキッズは、うるのクリエイティブ事務所の4名のスタッフの手で、マンガとして完成されて行きます。原案の流れはうるのさんが作成します。そこ から高橋さんが作画し、佐々木真知さんが、着色と陰影を付けるなどの仕上げを行います。最後に、うるの智里さんが、ウェブサイトにアップロードできるよう にデータの加工を行い、公開へと至ります。

連載が始まった当初は、うるのさんがコマ割りなども細かく指導していたそうですが「最近は、本当にかんたんな流れだけ伝えれば、高橋がボケやつっこ みのギャグネタも含めて考えてくれるようになりました。信頼して仕事を任せると伸びてくれますね」と、キッズとともに成長した弟子に目を細めていました。

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図4 カソクキッズ第30号制作中。作画を進める高橋さん(右)と、色づけをする佐々木さん

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図5 カソクキッズ制作チーム 前列:佐々木真知さん(左)、高橋まさえさん(右)、後列:うるの智里さん(左)、うるの拓也さん(右)

おかげさまで、カソクキッズへののべアクセス数は約6万件となり、皆さまから感想や励ましの言葉、おしかりの言葉など様々なフィードバックを頂いていま す。カソクキッズたちは新たな始動に向けて、しばらく充電期間に入ります。皆さまのお言葉を参考にさせて頂き、より分かりやすく、科学の楽しさをお伝えで きるよう努力して行きたいと思います。ぜひ読後の感想やコメントなどをKEK広報室までお寄せ下さい。