MEG

スイスのポールシェラー研究所における国際共同実験MEGでは、レプトンフレーバーの保存を破る稀な崩壊様式である、ミューオンから電子・光子への崩壊の探索を進めています。

main544

MEG実験装置 撮影者 三原智

目的・ビジョン

素粒子の超対称大統一理論では、超高エネルギーにおいて素粒子の間に働く3つの力が統一され、物質を形成する素粒子であるクォークとレプトンも統一されると考えられています。その結果として、世代の異なる電荷を持ったレプトン間に混ざり合いが生じる「フレーバー混合」が起こると考えられています。MEG実験は、レプトンのフレーバー混合の一つである「ミューオンが電子と光子に崩壊する現象(μ→eγ崩壊)」を探索する実験です。

μ→eγ崩壊は、標準理論では起こらないとされている現象ですが、レプトンの1種である「ニュートリノ」のフレーバー混合はすでに実験的に観測されています。したがって、μ→eγ崩壊も起こる可能性があるのですが、その崩壊確率は現在測定できる下限よりもずっと小さいと考えられています。一方で、超対称性粒子が存在すると仮定すると、ニュートラリーノと呼ばれる超対称性粒子を介してもっと高い確率でμ→eγ崩壊が起こる可能性があります。MEG実験で、ミュー粒子の崩壊過程を10-13の分岐比の精度で超精密に測定し、μ→eγ崩壊を捉えることにより、超対称性粒子の存在を間接的に観測することが可能となります。

概要

スイスのポールシェラー研究所の陽子加速器は2MWを超えるビームパワーを有し、世界最大強度の直流ミューオンビームを供給できる施設です。MEG実験グループでは、この施設で供給される毎秒3000万個のミューオンを静止標的に停止させ、そこから放出されるガンマ線と陽電子を、液体キセノンガンマ線検出器と勾配磁場型陽電子スペクトロメータにより計測することで、μ→eγ崩壊の探索を行っています。実験は2009年からデータ収集が開始され、今後、数年間にわたって継続的にデータ収集を行うことで、10兆分の1の目標感度に到達する見込みです。MEG実験は国際共同実験としておよそ70名の研究者が実験の遂行とデータ解析に取り組んでいます。日本からは高エネルギー加速器研究機構、東京大学のグループが計画段階から中心メンバーとして参加しています。

補足説明

ミューオン:3世代ある素粒子のうち、第2世代に属する電荷を持ったレプトン。電子は第1世代に属するレプトンである。第3世代にはタウ粒子が属し、それぞれのレプトンに対応するニュートリノが存在する。

フレーバーの混合:素粒子の標準模型においては、反応の前後においてそれぞれの世代(フレーバー)に属するレプトンの数が変化しない(保存する)と考えられている。通常のミューオンの崩壊(ミッシェル崩壊 μ→eνν)においては終状態にニュートリノと反ニュートリノが現れるためフレーバーの保存が成立している。フレーバーの混合とは、この保存則が破れるような現象のことを意味する。

関連するWebページ

MEG実験 http://meg.psi.ch/

関連する研究グループ

MEG実験日本グループ http://www.icepp.s.u-tokyo.ac.jp/mori/
ミューオン稀過程研究グループ
  超伝導低温工学研究グループ
ミューオン精密測定研究グループ

関連する研究施設

スイスポールシェラー研究所 http://www.psi.ch